経営者が知っておきたい! 民事再生と破産の違いを弁護士が解説
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新型コロナウイルスの感染拡大によって、会社の資金繰りに悩む経営者の方も少なくないものでしょう。
滋賀県内では、大津市内のリゾートホテルを経営する会社が自己破産申請を大津地裁に申し立てたと報道されました。新型コロナ関連の倒産としては県内初で、負債は約50億円にのぼるとされます。
倒産には、「自己破産」などの清算型の手続きだけでなく、「民事再生」などの再建型の手続きもあります。
本コラムでは、経営者が押さえておきたい民事再生と破産の違いと、民事再生の進め方について、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。
1、資金繰りが厳しくなった会社がとれる方策とは?
会社の資金繰りが厳しくなったとき、経営者の方はリストラを実施したり、銀行に融資を依頼したりと、さまざまな方策を検討されると思います。
しかし、いよいよ事業の継続が難しくなった場合には、大きく分けて2つ方法が考えられます。
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(1)私的整理
私的整理とは、債権者と債務者である会社が協議の上で進める債務整理のことを言います。任意整理と呼ばれることもあります。
私的整理では、支払いスケジュールの調整や、返済額の一部を免除してもらうなどして再建を図ります。しかし債権者が応じてくれなければ、債務整理を行うことはできません。 -
(2)法的整理
法的整理とは、裁判所が関与し法律に基づいた手続きによって進められる債務整理のことを言います。
債務整理は、会社を消滅させるための「清算型」の手続きのように捉えられがちですが、民事再生といった「再建型」の手続きも含まれます。一般的に、このまま事業を継続することが難しい、という状態に陥った会社が法的整理を行うことになりますが、必ずしも「法的整理=事業廃止」とは限らないことは理解しておく必要があります。
2、「民事再生」と「破産」の違い
私的整理では再建が難しい場合、法的整理を選択することになります。
具体的には、清算型として「破産」や「特別清算」などの手続きがあります。再建型としては、「民事再生」や「会社更生」などの手続きがあり、どれを選択するかは状況に応じて検討します。
これらの手続きはそれぞれ異なるものですが、民事再生と破産は、具体的にどのような点が異なるのでしょうか。
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(1)民事再生とは
民事再生は、債務者主導で会社の再建を図る手続きです。裁判所や監督委員のもとで、経営陣は退陣することなく、会社の事業を継続したまま再建を図ることが可能です。
なお、再建型には会社更生という手続きもありますが、この場合、債務者主導で再建を図ることはできません。会社更生では従来の経営陣は退陣し、新しい経営陣のもとで会社の再建が図られることになります。 -
(2)破産とは
破産は、会社を清算する法的手続きです。
裁判所は破産管財人を選任します。裁判所の監督のもとで、会社の財産を売却するなどして債権者に配当し、会社は消滅します。
個人破産のように一部の財産を残すといったことはできないので、会社の財産は一切残らないと心得ておきましょう。
なお、法人と個人は区別されるので、会社が破産したからといって代表取締役個人が破産するわけではありません。ただし、代表取締役個人が会社の債務の連帯保証人になっていたようなときには、会社の破産によって個人も破産せざるを得ないことがあります。 -
(3)民事再生と破産の違い
ここまで民事再生と破産についてご説明していきましたが、民事再生と破産とでは手続きの「目的」が大きく違うことがお分かりいただけたと思います。
民事再生は会社の存続を目的とする手続きであるのに対し、破産は会社の存続が望めないため、事業を終わらせ債務を整理することが目的になります。
3、民事再生と破産どちらを選択するべきか
破産と民事再生のどちらの手続きをとるべきかについては、ケースに応じた判断が必要です。しかしその判断のためには、手続きのメリット・デメリットをしっかりと押さえておくことが重要になります。
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(1)民事再生のメリット・デメリット
民事再生のメリットは、前述したとおり事業を継続できる点にあります。また、債務の一部免除や弁済猶予が受けられるほか、従業員を残しておけるなどもメリットと言えるでしょう。
一方で、手続きにおける経済的な負担が重いことや、抵当権などの担保権を実行されてしまう可能性があるのは大きなデメリットと言えます。
また民事再生の申し立てをしたことが取引先や顧客などに知られるので、信頼が低下し、その後の事業に影響を及ぼす可能性があるといったリスクもあります。 -
(2)破産のメリット・デメリット
破産のメリットとしては、経営者が新たなスタートを切ることができるという点があげられます。破産手続きが終了すれば、借金がない状態から事業を立ち上げることも可能です。
しかし、破産手続きを進めることで、築き上げてきた会社を失うのはもちろんのこと、従業員も解雇しなければいけません。再スタートが切れる代わりに、苦しい選択を迫られることになります。
4、民事再生手続きの流れ
民事再生手続きは、申し立てから再生計画が認可されるまで、おおよそ6か月ほどかかります。具体的な流れを確認していきましょう。
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(1)申し立て
債権者の一覧表といった疎明資料を作成したのち、裁判所へ民事再生の申し立てを行います。
なお、申し立ての際には、裁判所に予納金を納める必要が生じます。費用捻出が難しい場合は、この時点で民事再生の手続きを諦めなければいけません。 -
(2)手続き開始の決定~再生計画案等の作成
民事再生の申し立てがなされると、保全処分や再生手続きを監督する監督委員が選任されます。裁判所が、再建の可能性があると判断した場合は、開始決定が出されます。
再生手続きの開始が決定されると、財産目録などの必要書類とあわせて、再生計画案の提出が求められます。
再生計画案には、債権のカット率や弁済の方法などを具体的に記載しなければいけません。適切に作成する必要があるため、弁護士などに作成を依頼すると良いでしょう。 -
(3)再生計画の認可
作成した再生計画案を基に、債権者に再生計画を説明する債権者集会を開きます。このとき、債権者の頭数の過半数の賛成および債権総額の2分の1以上の賛成が必要です。
債権者の同意が得られ、法律上の障害事由がなければ、再生計画が認可されます。
認可決定後は、再生計画に従って事業を継続することになります。再生計画の履行完了、または認可決定後3年経過時に、民事再生手続きは終結します(民事再生法188条2項)。
5、まとめ
本コラムでは、経営者が押さえておきたい民事再生と破産の違い、民事再生の手続きの流れについて解説しました。
民事再生は経営陣がそのまま事業を継続しながら再建する手続きであるのに対し、破産は会社を消滅させる手続きであるという大きな違いがあります。
どちらを選択するべきかについては、会社の置かれている状況によって変わるため、弁護士に相談して決断すると良いでしょう。ただし、会社の資金がまったくないという状況では、民事再生手続きを選択することはできません。経営状況が悪化している場合は、早期に相談するのが得策です。
ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスでは、弁護士が会社の現在の状況をうかがい、どのような手続きが最良の選択となるのかを共に検討していきます。
コロナ禍で苦しい思いをされている経営者の方にとって、心強い存在になれるように全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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