持続化給付金の不正受給をしたら逮捕される? ペナルティーはある?
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新型コロナウイルスの感染拡大で経営に影響を受けた個人事業主や中小企業に対し、国は「持続化給付金」を支給し支援を行っています。経済産業省によると全国で約441万件の申請があり、約5.5兆円が支給されました。
ところがスピーディーに支給するために審査や手続きを簡素化した結果、不正受給が横行しました。この状況に対して国は調査を進めており、次々と逮捕者がでています。ペナルティーの制度もあります。
では不正受給をした場合、すぐに逮捕されるのでしょうか? どんなペナルティーがあるのでしょうか? わかりやすく解説します。
1、持続化給付金の不正受給とは
持続化給付金はコロナ禍で苦しむ事業者のための支援策ですが、対象者以外の会社や個人が不正に申請し、受給するケースも少なくなく、警察も本格的に捜査に乗り出しています。
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(1)持続化給付金とは
持続化給付金とは、新型コロナウイルスの感染拡大で営業を自粛するなどして売り上げが落ち込んだ事業者を対象に国が支給する支援金です。
支給要件と対象者、必要書類、申請方法は以下の通りです。
【支給対象者】- 中堅・中小企業、小規模事業者
- 個人事業者
【支給要件】
- 新型コロナウイルスの影響で売り上げが前年同月比50%以上減少
- 平成31年以前から売り上げがあり、今後も事業を継続する予定
【給付額】
前年の事業収入−(前年同月比50%以上減少した月の事業収入×12か月)- 中堅・中小企業、小規模事業者:上限200万円
- 個人事業者:上限100万円
【必要書類(証拠書類)】
- 前年の確定申告書類
- 売り上げが減少した対象月の売上台帳など
- 通帳の写し
- 本人確認書類の写し
【申請方法】
オンライン申請(パソコン、スマートフォン) -
(2)不正受給で逮捕者相次ぐ
持続化給付金は支給要件が厳しくないうえに申請書類(証拠書類)も少なく、パソコンやスマホから簡単に申請できるため、一般的な給付金と比べて受給しやすいといえます。
早期の支援を優先した制度設計ですが、そこが弱点となり、当初から不正受給が懸念されていました。
実際、申請受付当初からSNSでは「申請代行します」「誰でもできます」などの不審な書き込みが多数みられました。
国民生活センターも無職など受給資格がない方に不正受給をすすめる電話やメール、SNSが相次いでいるとして、注意喚起をしています。
不正受給に対しては警察が捜査を進めており、逮捕者も相次いでいます。
山梨県警は令和2年7月、虚偽の書類を使って100万円を不正受給したとして、詐欺容疑で埼玉県の男子大学生を逮捕しました。
組織的な不正指南・代行が行われて多額の被害がでたケースもあり、愛知県警が摘発した詐欺事件では、名古屋市の男性会社役員ら3人が約400人に不正受給の指南や代行をし、約4億円を不正に受け取った可能性があるとされています。
2、持続化給付金不正受給の判断基準
不正受給が起こる背景には、どこからが不正にあたるのか判断が難しいという事情もあります。ケース・バイ・ケースではありますが、判断基準には次のようなものがあります。
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(1)不正受給の要件
持続化給付金は「持続化給付金給付規程(中小法人等向け)」と「持続化給付金給付規程(個人事業者等向け)」に基づき支給されています。
持続化給付金給付規程(中小法人等向け)・持続化給付金給付規程(個人事業者等向け)とも、不正受給について、各第7条5号で次のように規程しています。不正受給(偽りその他不正の行為(詐欺、脅迫、贈賄その他の刑法(明治40年法律第45号)各本条に規程するものをいう。)に触れる行為のほか、刑法上の犯罪を構成するに至らない場合であっても、故意に基本情報等に虚偽の記入を行い又は偽りの証明を行うことより、本来受けることができない給付金を受け、又は受けようとすることをいう。
ただし、基本情報等に事実に反する内容の記入があった場合であっても、これが故意によらないものと認められるときは不正受給には該当しないものとする。以下同じ。)等が発覚した場合には、第10条の規定に従い給付金の返還等を行うこと
上記をまとめると、不正受給に該当するのは、次の3つの行為のいずれかによって、本来受けることのできない給付金を受けたり、受けようとした場合です。
- 刑法上の犯罪(詐欺、脅迫、贈賄など)に該当する行為
- 故意に基本情報等に虚偽の記入
- 故意に基本情報等に偽りの証明
詐欺や脅迫などの犯罪行為はもちろんアウトです。
それ以外のケースでも、書類にうその情報を記載したり証明書類を偽造したりして、受給資格のない方が受給した・しようとした場合は不正受給にあたります。
なお、記載ミスや勘違いなど、故意ではない場合には不正受給に該当しません。 -
(2)不正受給の具体的なケース
これまでに発覚している不正受給の手口は、主に次のようなものです。
【書類の改ざん・ねつ造】- 「売り上げが前年同月比50%以上減少」という受給要件を満たすため、前年の確定申告書類を改ざんするなどして、当該月の売り上げを操作したり架空の売り上げを計上したりして申請した
- 税務署受付印を偽造し、虚偽の確定申告書類を作成して申請した
【受給資格を偽装】
- 個人事業主や中小企業が支給対象なのに、学生やサラリーマンが個人事業主と偽り、虚偽の確定申告をして申請した
【新型コロナの影響ではない】
- コロナ禍以外の理由で売り上げが減少したにもかかわらず、コロナの影響だと偽り申請した
3、不正受給には金銭的ペナルティーと刑事罰が科される
不正受給をすると、金銭的なペナルティーが課されます。また悪質な場合には刑事責任を問われる可能性があります。
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(1)不正受給には多額のペナルティー
不正が発覚した場合、全額を返還すればすむというわけではありません。次のようなペナルティーが課されます(各持続化給付金給付規程第10条2項1号乃至3号)。
- 給付金全額の返還
- 不正受給の翌日から起算して返還日まで年3%の延滞金の支払い
- 給付額と延滞金の合計額の2割相当額の加算金の支払い
- 屋号や氏名等の公表
- 内容により不正受給者を刑事告発
たとえば満額の100万円を不正受給した場合、1年後に発覚・返還すると延滞金3万円と20万6000円の加算金、合計123万6000円を支払わなければいけません。
受給額の4分の1程度を罰金として支払うことになり、かなり高額です。
それ以上に影響が大きいのが屋号や氏名等の公表です。
不正受給を行ったことが公表されれば、取引が停止になったり悪いうわさが広がったりして、経営に大きなダメージが出るでしょう。ネットに情報が載れば、半永久的に情報が残り続けます。
お金を払うだけでなく、営業が続けられなくなる可能性もあるのです。 -
(2)詐欺罪に問われることもある
不正受給を行った場合、刑事責任を問われることがあります。
不正受給はうそをついて国からお金をだまし取ったことになり、「詐欺罪」に該当します。
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」です(刑法第246条1項2項)。
罰金刑がないため、執行猶予がつかない有罪判決となれば刑務所に行くことになります。
ただし不正受給をしたからといって、必ずしも逮捕されるわけではありません。
日本郵便とかんぽ生命では、かんぽ生命の不正販売が原因にもかかわらず、コロナ禍で収入が減少したと偽り、約120人が給付金を不正受給していました。その多くがすでに給付金を返還しており、逮捕は免れています。
逮捕されるかどうかは「悪質かどうか」がひとつの判断基準になると考えられます。
とはいえ悪質でなかったとしても、不正は不正です。
「バレない」「逮捕されることはないだろう」と思っていても、突然警察が家にやってきてい逮捕される可能性はゼロではありません。
4、代行業者にそそのかされた場合の対応
持続化給付金の不正受給は「誰でも100万円受け取れる」「簡単にできてバレない」などという不正受給業者の言葉につられ、安易に手を出してしまった方が少なくないとみられます。では業者にそそのかされて不正をした場合、どう対応すればいいのでしょうか?
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(1)正直に不正を申告
不正受給を行ってしまった場合には、まず正直にその事実を警察や行政に申告しましょう。
業者にそそのかされたのだとしても、不正は不正です。
まず大事なのは、不正をした事実をきちんと申告し、警察の捜査に協力することです。もちろん不正受給したお金は返還しましょう。 -
(2)弁護士に相談
不正受給により逮捕されそうな場合は、弁護士への相談もひとつの手です。
弁護士費用はかかりますが、弁護士はご相談いただいたケースが不正にあたるのか、判断をしてくれます。不正にあたる場合には、その後の対応方法をアドバイスしてくれます。警察や行政への相談の付き添いやサポートも可能です。
摘発された場合も警察や裁判の対応を行ってくれます。
5、まとめ
不正受給をしてしまった・した可能性がある方は、今この瞬間も「どうなってしまうのか」「逮捕されるのか」と不安でいっぱいでしょう。おひとりで抱えず、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスにご相談ください。弁護士はご事情をお伺いし、今後の対応方法をアドバイスいたします。お客さまの秘密はしっかりと守りますので、まずはお話をお聞かせください。
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