よくある遺産争いのパターンとは? トラブルの対処法も含めて解説

2020年09月30日
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よくある遺産争いのパターンとは? トラブルの対処法も含めて解説

「兄弟間の仲が悪く、高齢の親が亡くなったら遺産争いになるかもしれない」……。このような心配をしながら生活をされている方も、少なくないでしょう。
滋賀県においても、平成30年度には大津家庭裁判所にて102件の遺産分割事件が取り扱われています(司法統計 平成30年度遺産分割事件数)。
遺産争いが深刻化すれば、家庭裁判所などで時間や労力を費やして解決を図らなければなりません。しかし、よくある遺産争いのパターンと対処法を知っておけば、事態を未然に防いだり、トラブルを早期に解決できる可能性も高くなります。

本コラムでは、よくある遺産争いのパターンと対処法について、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説していきます。

1、遺産をめぐる争いは増加傾向に

裁判所が公表する資料によると、平成20年には1万2879件であった遺産分割事件の新受件数は、平成30年には1万5706 件に増加しています。
これにより当事者間では解決できず家庭裁判所が関与する遺産争いが、増加傾向にあることが分かります。その背景には、高齢化の影響による相続件数の増加などがあると考えられます。
また、家庭裁判所の遺産分割事件においては、手続きに弁護士が関与する割合が増加しているという特徴があります。
長年遺産分割事件において弁護士が関与する割合は6割程度であったのですが、平成30年には79.7%と約8割にまで増加しています。
これらの統計からは、相続トラブルによる当事者間の対立が深刻になっている現状を垣間見ることができるでしょう。

2、よくある遺産争いとは? 5つのトラブル事例を紹介

よくある遺産争いとして、以下の5つのトラブルをご紹介します。

  1. (1)不動産をめぐるトラブル

    相続財産のなかに不動産が含まれているときには、遺産争いが生じやすいといえます。
    たとえばふたりの兄弟が相続人であるときに、実家で被相続人と同居していた兄に唯一の財産である家を相続させるといった遺言をのこしていたとします。
    このようなケースで弟が納得できば、問題はありません。しかし納得できないときには、トラブルが生じる可能性があります。
    一定の範囲の相続人には、「遺留分」という最低限の相続分が保障されています。そのため弟が遺留分を主張すれば、兄は遺留分に相当する金銭を弟に支払わなければなりません。
    しかし兄自身に支払うだけの資力がなければ、結果として家を売却するなどの方法で金銭を工面しなければなりません。
    また不動産は、評価額をめぐり意見の対立が生じやすいという面もあります。

  2. (2)内縁の配偶者と相続人の間のトラブル

    被相続人に内縁の配偶者がいるようなときには、相続人と内縁の配偶者の間で争いが起きる可能性があります。
    内縁の配偶者には、日本の法律では相続権が認められていません。そのため内縁の配偶者は財産を遺贈する旨の遺言書が残されていなければ、財産を譲り受けることはできず、相続人との間でトラブルになることが少なくありません。
    なお内縁の配偶者に宛てた遺言書が残されていたとしても、相続人が納得できなかったり遺留分を主張するなどしてトラブルに発展することもあります。

  3. (3)介護していた相続人と他の相続人とのトラブル

    被相続人を特定の相続人が介護していた場合には、トラブルになる可能性があります。
    このようなケースでは介護という貢献を「寄与分」として法定相続分に上乗せすることができる場合があるためです。介護していた相続人と他の相続人では、「寄与分を認めるかどうか」「寄与分を認めるとしてもどの程度とするか」といった問題でトラブルが発生することがあります。

  4. (4)遺産分割協議におけるトラブル

    遺言書が残されていないときなどには、法定相続人全員で遺産分割協議を行って具体的な財産の配分を決定しなければなりません。しかし相続人同士の仲が悪く話し合いが進まなかったり、遺産を独り占めしようとする相続人がいたりして争いが生じる可能性があります。
    しかし、遺産分割協議は税金の関係で相続税の申告・納税期限までに成立させておくことが望ましく、できるだけ早期に解決を図る必要があります
    また遺産分割協議は、相続人が認知症であったり未成年であったりするのにそのまま協議を進めてしまえば、有効・無効に関するトラブルが生じることもあります。

  5. (5)遺言書に関するトラブル

    遺言書があるときでも、被相続人が作成した自筆証書遺言に記載漏れがあるなど無効になることがあります。また遺言書の偽造や隠匿が疑われることもあります。
    遺言書に関するトラブルは、相続人や受遺者が受け取る財産に非常に大きな影響を与える可能性があるので深刻なトラブルに発展しやすいといえます。そのためトラブルを未然に防ぐ努力が必要になります。

3、遺産争いに弁護士ができることとは

遺産争いにおける有効な対処法として、弁護士に相談することが挙げられます。弁護士は、遺産争いに対して、次のようなことができます。

  1. (1)遺言書作成のアドバイスやサポート

    遺産争いでは、遺言書の作成がトラブルを未然に防ぐことにつながるケースが多くあります。ただし、遺言書は有効かつ遺留分に配慮した内容でなければ、かえってトラブルの種になりかねません。
    弁護士は、有効な遺言書を作成するためのアドバイスやサポートを行うことができます。
    たとえば「内縁の妻に財産を残しながら、相続人の遺留分を侵害しない内容の遺言をしたい」、「介護をしてくれた相続人に、寄与分として多めに相続させておきたい」といった相談にもアドバイスができます。
    また、有効な遺言書の偽造や隠匿がないように、公正証書遺言にしておくなどのアドバイスやサポートが可能です
    さらに、「唯一の相続財産である家を相続人の一人に譲りたい」といったときには、家を譲り受けた相続人が他の相続人の遺留分相当額を支払えるだけ金銭を生命保険金といった形で準備しておくといったアドバイスも可能です。

  2. (2)遺言執行者として遺言の内容を実現

    弁護士は、遺言書の内容を確実に実現する遺言執行者になることができます
    相続人同士がもめたときでも、第三者である遺言執行者がいればトラブルを解決しやすいといえます。

  3. (3)遺産分割協議でのサポート

    遺産分割協議では、弁護士はご依頼者の代理人として協議を進めることができます。
    そして、認知症の相続人であれば成年後見人の選任、未成年者で親権者と利益が相反する相続人であれば特別代理人の選任を家庭裁判所に求めるなど法律的に有効に成立するためのアドバイスやサポートも可能です
    ご依頼者にとっては、弁護士に依頼することでご自身の意見を主張しやすさや、トラブルの相手と顔を合わせない分だけ精神的な負担が減るなどのメリットがあることでしょう。
    また弁護士は遺産分割協議書を作成するなど、後日の紛争に備えることにも長(た)けています。

  4. (4)調停や審判手続き

    遺産争いの具体的対処法として、家庭裁判所の調停手続きや審判手続きなどを利用する方法があります。このような裁判所が関与する手続きにおいて、弁護士は依頼者に有利になる主張や適切な証拠の提出などを行うことができます。その結果、家庭裁判所で主張が認められやすくなったり、早期に問題解決ができる可能性が高くなります。

4、相続人間の遺産争いの対処法

相続人間の遺産争いは、当事者間の協議で解決できなければ、家庭裁判所の遺産分割調停や審判で解決を図ることになります。
遺産分割調停は、相続人の一人もしくは数人で、他の相続人全員を相手方として家庭裁判所に申し立てます。調停では、調停委員を交えて当事者間で話し合いが進められます。裁判所は、遺産の鑑定を行ったり資料の提出を求めたりして事情を把握した上で、解決案の提示などを行います。なお遺産を探し出すことを目的とした手続きではないので、裁判所が遺産調査をしてくれるというわけではありません

遺産分割調停で当事者の合意ができなかったときには調停不成立となり、自動的に審判手続きが開始されます。審判では、最終的に被相続人の遺産の帰属が確定することになります。
なお、遺産分割事件は他の事件よりも高い割合で審判が行われており、積極的に審判が活用されているという特徴があります。

5、まとめ

本コラムでは、よくある遺産争いのパターンと対処法について解説していきました。
遺産争いは一度生じてしまえば、深刻で激しい争いになることが少なくありません。
そのため被相続人になる方に、生前に遺言書を作成しておくことを促すなどの予防策を講じておくことも大切です。
遺産争いが生じてしまった時には、家庭裁判所の調停や審判手続きを積極的に活用して解決を図りましょう。

ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスでは、遺産争いや相続に関してお悩みの方のお気持ちに寄り添いながらスムーズな解決をサポートいたします。
ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています