6時間勤務だと休憩時間は何分になる?|労働基準法に基づくルールを解説

2023年12月25日
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6時間勤務だと休憩時間は何分になる?|労働基準法に基づくルールを解説

令和3度に滋賀県内の労働基準監督署が、長時間労働が疑われる事業場に対して行った監督指導の対象となった380事業場のうち、違法な時間外労働があったものは168事業場でした。

多くの場合、パートタイム労働者の労働時間は、フルタイムで働く正社員よりも短くなります。たとえば正社員は一日に8時間以上働く一方で、パートやアルバイトは6時間で勤務が終わる、という会社は多々あります。労働基準法では、勤務時間に応じた休憩時間の付与が会社に義務付けられています。通常、8時間勤務の場合は1時間以上の休憩が必要になりますが、6時間勤務の場合は45分以上の休憩となります。

本コラムでは、労働基準法における休憩時間のルールや、6時間勤務の労働者の休憩時間に関して、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。

1、所定労働時間が6時間の場合、休憩時間は何分?

労働基準法第34条第1項では、労働時間に応じて、以下のとおり休憩時間の最低ラインが定められています。

  • 労働時間が6時間を超える場合:45分以上
  • 労働時間が8時間を超える場合:1時間以上


所定労働時間が6時間ちょうどの場合なら、残業が発生しなければ休憩時間は不要です
しかし、残業が発生して労働時間が6時間を1分でも超えると、45分の休憩付与が必要となります。

なお、就業規則などにおいて労働基準法によって義務付けられている水準を超える休憩時間の付与が定められている場合には、その定めに従います。
たとえば所定労働時間が6時間であっても、就業規則によって1時間の休憩が認められていれば、労働者は1時間の休憩をとることができるのです。

2、休憩に関するその他のルール

以下では、休憩時間の最低ラインのほかにも労働基準法で定められている、休憩時間に関するルールを解説します。

  1. (1)休憩時間は一斉に与えるのが原則

    使用者は労働者(従業員)に対し、原則として休憩時間を一斉に与えなければなりません(労働基準法第34条第2項本文)。
    すなわち、事業場における全労働者が同時に休憩をとることが原則になります。

    ただし、例外的に、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数代表者との間で労使協定を締結すれば使用者は休憩時間を分散して付与することができます(同項但し書き)。
    実際には、顧客対応の必要性や働き方改革などの観点から、休憩時間の分散付与を認める労使協定を締結している会社が多いといえます。

  2. (2)休憩時間は自由に利用させなければならない

    使用者は、休憩時間を労働者の自由に利用させなければいけません(労働基準法第34条第3項)。

    「自由」とは、業務から完全に解放されていることを意味します。
    名目上は休憩時間であっても、実質的に見て業務から解放されていない場合は休憩時間ではなく労働時間であると評価され、賃金が発生することになるのです。

3、休憩ではなく、労働時間と評価される時間の例

労働者が働く現場の多くでは、「休憩時間」と称されているが実質的に見れば労働時間であるというタイミングが存在しています。
以下では、名目上は休憩時間であるが実際には労働時間と評価であり、賃金が発生する可能性が高いと考えられる時間について解説します。

  1. (1)朝礼やランチミーティングの時間

    朝礼やランチミーティングは、実質的に強制参加であるにもかかわらず、始業前や休憩時間に位置づけて開催されるケースが多いといえます。
    強制参加の朝礼やランチミーティングは労働者が使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるため、労働時間にあたると考えられます。

    なお、朝礼やランチミーティングへの参加が完全に任意であれば、労働時間にあたらないと評価すべき場合もあります。
    ただし、労働者から見て参加を断る自由が本当にあるかどうかは、実質的な観点から判断しなければなりません。
    たとえば、上司から参加するように圧力がかかっており部署内の労働者が全員参加している場合などには、実質的に見て「強制参加」と判断される可能性が高いでしょう。

  2. (2)制服に着替える時間

    会社によって勤務時間中に着用すべき制服が指定されている場合、その制服に着替える時間は業務上必要不可欠といえます。
    指定の制服に着替える場所も使用者が指定している場合、制服への着替えの時間についても、労働者は使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるため、労働時間にあたると考えられます

    「制服に着替える時間は、始業前または終業後であって労働時間にあたらない」と整理している会社も多いですが、実際には、このような取り扱いは労働基準法違反にあたる可能性が高いのです。

  3. (3)電話番をしている時間

    電話番をしている労働者は、その時間において具体的な業務に従事していなくても、会社の指揮命令下に置かれている状態と評価できます。
    したがって、電話番をしている時間も労働時間にあたります。

    また、休憩時間中の労働者に対して、「手が空いているなら電話番をしておいて」と指示する会社もあります。
    しかし、法律上は、電話番を指示した時点でその時間は休憩時間ではなく労働時間となるのです。

  4. (4)手待ち時間

    具体的な業務はまだ発生していないものの、会社からの指示があり次第対応できるように待機している時間は、一般に「手待ち時間」と呼ばれます。
    手待ち時間においては、労働者は労働から解放されておらず、会社の指揮命令下に置かれている状態といえます。
    したがって、手待ち時間は労働時間に該当し、賃金が発生するのです。

    実働時間のみを対象として賃金を支払い、手待ち時間に対しては賃金を支払わない会社があるようですが、このような取り扱いも労働基準法に違反している可能性は高いといえます。

  5. (5)業務が生じたら対応が必要な昼食時間

    労働者が昼食をとる時間についても、会社が休憩時間として取り扱うためには、その時間を労働者の自由に利用させなければなりません。

    たとえば、会社が昼食をとる場所を自席に指定しており業務が生じれば昼食を中断して対応するよう指示している場合には、その昼食時間は休憩時間として認められず、労働時間にあたります。

    上記のいずれの場合においても、未払いの賃金が発生していることが判明したら、会社に対して支払いを請求することができます。
    とくに会社による労働基準法違反が長期にわたっている場合には、未払いの賃金も蓄積して多額になっていると考えられます
    そのような場合には弁護士に相談したうえで、法的手段も検討しながら、会社に対して支払いを請求することを検討すべきでしょう

4、パート・アルバイトでも残業代を請求可能|計算方法を紹介

パートやアルバイトの方でも、所定労働時間を超えて働いた場合は、会社に対して未払い残業代を請求できます。
以下では、残業代の金額を計算する方法を解説します。

  1. (1)1時間あたりの基礎賃金を計算する

    まずは以下の計算式に従い、1時間あたりの基礎賃金を計算します。

    1時間あたりの基礎賃金
    =1か月の総賃金(以下の手当を除く)÷月平均所定労働時間

    <総賃金から除外される手当>
    • 時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当
    • 家族手当(扶養人数に応じて支払うものに限る)
    • 通勤手当(通勤距離等に応じて支払うものに限る)
    • 別居手当
    • 子女教育手当
    • 住宅手当(住宅に要する費用に応じて支払うものに限る)
    • 臨時に支払われた賃金
    • 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

    <月平均所定労働時間の求め方>
    月平均所定労働時間=年間所定労働時間÷12か月

    ※所定労働時間:労働契約や就業規則で定められた労働時間


    (例)
    1か月間に10万円の賃金(上記手当を除く)が支給され、月平均所定労働時間が80時間の場合
    →1時間あたりの基礎賃金は1250円(=10万円÷80時間)
  2. (2)種類ごとに残業時間を集計する

    次に以下の種類ごとに、残業時間を集計します。

    1. ① 法定内残業
      →所定労働時間※を超え、法定労働時間※を超えない部分の労働時間
      ※所定労働時間:労働契約または就業規則で定められた労働時間
      ※法定労働時間:原則として1日8時間、1週40時間

    2. ② 時間外労働(法定外残業)
      →法定労働時間を超える部分の労働時間

    3. ③ 休日労働
      →法定休日※における労働時間
      ※法定休日:労働基準法第35条によって付与が義務付けられた休日。原則として1週間のうち1日のみ

    4. ④ 深夜労働
      →午後10時から午前5時までの労働時間
  3. (3)残業代の金額を計算する

    最後に、以下の式によって、残業代の金額を計算します。

    残業代=1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間数


    <割増率>
    法定内残業 通常の賃金
    時間外労働 通常の賃金×125%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×150%
    休日労働 通常の賃金×135%
    深夜労働ト 通常の賃金×125%
    時間外労働かつ深夜労働 通常の賃金×150%
    ※月60時間を超える時間外労働については通常の賃金×175%
    休日労働かつ深夜労働 通常の賃金×160%


    (例)
    • 1時間あたりの基礎賃金が1250円
    • 法定内残業が10時間
    • 休日労働が4時間

    残業代
    =1250円×(10時間+135%×4時間)
    =1万9250円

5、まとめ

企業は、勤務時間が6時間ぴったりの労働者には休憩を付与する必要がありませんが、1分でも残業が生じた場合には最低でも45分の休憩を付与しなければいけません。

勤怠管理が不適切な会社においては、適切な時間の休憩時間を与えていない場合や、休憩時間と称して労働者を指揮命令下に置き続けている場合があります。
このような取り扱いは労働基準法違反にあたるため、違和感を抱いた労働者の方は、労働基準監督署や弁護士に相談することを検討してください。

ベリーベスト法律事務所は、会社とのトラブルに関する労働者のご相談を承っております。会社に対して未払いの賃金や残業代を請求したいと希望される方は、まずはベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスにご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています