休日出勤したのに手当なしは違法? 知っておくべき休日出勤の考え方
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滋賀労働局のデータによると、2018年の滋賀県内の規模30人以上の事業場における総実労働時間は1768時間でした。
1990年の同条件の調査では2045時間であったことと比べると、近年業務の効率化などによって、労働時間が減少していることがわかります。
休日出勤をしたにもかかわらず、給与明細を見たら休日手当なしとなっていて、不審に思ったことがある方もいらっしゃるでしょう。
この点、労働基準法に違反している違法業者が存在することも事実ですが、休日出勤の考え方のポイントを見落としているだけ、ということもあり得るかもしれません。
休日出勤の考え方を正しく理解して、ご自身が受け取るべき給与がきちんと支払われているかどうかを確認しましょう。
本記事では、休日出勤に関する法律上の考え方などについて、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「労働時間の状況」(滋賀労働局))
1、休日出勤とは?
まずは、休日出勤の法的な意義や基本的な考え方について解説します。
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(1)就業規則所定の労働日以外の日に労働すること
「休日出勤」というのは法律用語ではありませんが、法的には、労働契約・就業規則などで定められている労働日以外の日に労働することを意味しています。
たとえば月曜から金曜が労働日で、土曜・日曜が休日と就業規則で定められている場合、土曜または日曜に働くことが「休日出勤」に該当します。 -
(2)休日には「法定休日」と「法定外休日」の2種類がある
一般にはあまり知られていませんが、法的観点からのいわゆる「休日」には2種類が存在します。
ひとつは、「労働基準法上必ず労働者に与えなければならない休日」で、これを「法定休日」と呼びます。
法定休日は、1週間につき1日、4週間を通じて4日と定められています(労働基準法第35条第1項、第2項)。
これに対して、「法定休日以外に、就業規則などで休日と定められている日」を「法定外休日」といいます。
たとえば土日が休日の会社であれば、土曜と日曜のうちどちらか一方が「法定休日」、もう一方が「法定外休日」となります。
なお、1週間に2日以上休日がある場合に、どちらの日を法定休日とするかについては就業規則などに定められるルールによります。
ただし、特に定めがない場合には、1週間のうち後に来る曜日の日が法定休日となります。
ここでいう1週間とは日曜から土曜のことを言いますので、土日休みの会社の場合は、就業規則で特に定めがなければ、土曜が法定休日、日曜が法定外休日です。
法定休日と法定外休日は、次の項目で解説するとおり、休日労働としての割増賃金を支払う必要があるかないかの違いがあります。
2、休日出勤の「手当」とは?
休日出勤に関する「手当」「休日手当」などは、一般的には休日出勤に対して支払われる「賃金」のことを意味しています。
休日出勤に対する賃金の支払いについては、法定休日と法定外休日で考え方が分かれています。
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(1)法定休日における休日出勤には35%の割増賃金が支払われる
法定休日において休日出勤(休日労働)をした場合、労働基準法第37条第1項本文に基づき、通常の賃金に対して割増率をかけた「割増賃金」を支払う必要があります。
休日労働の割増率は35%以上とされています(労働基準法第37条第1項の時間外および休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)。
たとえば、1時間当たりの賃金が2000円の労働者が、法定休日において8時間の休日出勤をした場合、基本給に加えて、以下の金額の追加賃金を受け取ることができます。追加賃金額
=2000円×8時間×1.35
=2万1600円 -
(2)法定外休日における休日出勤には通常の賃金が支払われる
これに対して、法定外休日において休日出勤(休日労働)をした場合には、労働基準法上、使用者が労働者に割増賃金を支払う義務はありません。
しかし、実際に労働を行った時間数については、通常の賃金と同じ水準の賃金を上乗せで支給する必要があります。
よって、1時間当たりの賃金が2000円の労働者が、法定外休日において8時間の休日出勤をした場合、基本給に加えて、以下の金額の追加賃金を受け取ることができます。追加賃金額
=2000円×8時間
=1万6000円 -
(3)管理監督者には休日手当は支払われない
なお、労働者が「監督もしくは管理の地位にある者」(労働基準法第41条第2号)の場合には、休日労働に対する追加賃金は支払われません。
ただし、労働基準法上の管理監督者に当たるかどうかは、単に肩書が管理職であることだけでなく、権限や待遇などの面も総合的に考慮したうえで判断されます。
そのため、管理監督者に当たるからという理由で休日手当なしの取り扱いを受けている方は、本当にその取り扱いが妥当かどうか、弁護士に確認することをおすすめします。
3、代休を取得した場合の賃金の考え方について
労働者に休日出勤をさせる代わりに、後日代休を取得することを認める場合があります。
労働者が休日出勤後に代休を取得した場合の賃金の考え方は、以下のとおりです。
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(1)法定休日の休日出勤には原則どおり割増賃金が支払われる
法定休日において休日出勤をした後、労働者が代休を取得したとしても、「休日労働をした」という事実に変わりはありません。
したがって、休日労働に対する35%以上の割増賃金は、労働基準法の規定に従って通常どおり支払われます。
なお、法定外休日における休日出勤については、前述のとおり、割増賃金ではなく通常の賃金が支払われます。 -
(2)代休を取得した日の賃金は支払われない
一方、労働者が代休を取得した日については、もともとは労働日であったものの、実際には労働を行っていないため、賃金は支払われません。
そのため、休日出勤をした日と、代休を取得した日の賃金相当額が相殺され、事実上割増分の精算のみが「休日手当」の支給という形で行われます。
なお、休日出勤が法定外休日において行われた後に代休を取得した場合には、割増分が存在しませんので、賃金の精算は差し引きゼロということになります。 -
(3)有給休暇を代休より優先して取得してもよい
なお労働者としては、代休よりも有給休暇を優先して取得することも可能です。
有給休暇の取得は労働者の権利であり、使用者は原則として、労働者が請求する時季に有給休暇を与えなければならないからです(労働基準法第39条第5項本文)。
例外的に、有給休暇の取得が事業の正常な運営を妨げる場合には、使用者が時季を変更することが認められますが(同項ただし書き)、「有給休暇の代わりに代休を取得せよ」という理由で有給休暇の時季を変更することは認められません。
労働者としては、有給休暇であれば賃金が通常どおり支払われるので、賃金の支払われない代休を取得するよりも有利になります。 -
(4)代休と振替休日は異なる
なお、代休と似ている概念として「振替休日」がありますが、両者は法的には全く異なるということに注意が必要です。
代休は、休日出勤をした労働者に対して、事後的に与えられる休暇です。
これに対して振替休日は、あらかじめ休日と労働日を入れ替えることにより、もともと労働日であった日が休日になったものになります。
代休の場合は、法定休日に行った労働については、休日労働に対する35%以上の割増賃金が支払われます。
これに対して振替休日の場合、事前に労働日と休日の振替が行われているため、労働者は休日労働を行ったという取り扱いにはなりません。
そのため、振替休日の場合は、労働者に対する35%以上の割増賃金の支払いは不要となります。
4、法定外休日の休日出勤でも割増賃金が支払われるケースとは?
労働者が法定外休日に休日出勤をした場合、労働基準法上、使用者には35%以上の割増賃金を支払う義務はなく、原則として通常の賃金と同じ水準によって計算した賃金を支払えば足ります。
ただし、休日出勤をした結果として、労働基準法上の「法定労働時間」を超過する場合には、時間外労働に対する25%以上の割増賃金を支払う必要があります(労働基準法第37条第1項本文)。
法定労働時間は、1日当たり8時間、1週間当たり40時間です(同法第32条第1項、第2項)。
たとえば、土日休み(法定休日は土曜)の会社において、労働者が日曜に8時間の休日出勤をした後、さらに月曜から金曜まで計40時間労働したとします。
この場合、日曜は法定外休日なので、休日労働に対する35%以上の割増率の適用はありません。
しかし、この1週間で労働者は計48時間の労働を行っていますので、法定労働時間を超過している8時間分については、通常の賃金に対して25%以上の割増賃金を支払う必要があるのです。
なお、このような形で時間外労働が発生する場合には、時間外労働の時間数を「三六協定」で定められる上限以内に収める必要がある点にも注意が必要です(同法第36条第1項)。
5、まとめ
休日出勤に対して手当が支払われるかどうか、また割増率の適用があるかどうかは、法定休日・法定外休日の区別や、代休を取得したかどうかなどによって変わってきます。
休日出勤が手当なしの取り扱いになっていて、法律上受け取るべき賃金が支払われていないのではないかと懸念されている方は、一度弁護士に相談することをおすすめいたします。
ベリーベスト法律事務所では、労働問題を取り扱う専門チームを設けており、労働者側での労務紛争を多数取り扱っています。
依頼者の労働者としての権利を守るため、会社に対して請求可能な内容を適切に検討いたしますので、残業代の未払いなどについてお悩みの方は、ぜひお早めにベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスにご相談ください。
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