身に覚えがない内容証明は無視しても大丈夫? 正しい対処法を弁護士が解説

2020年10月06日
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身に覚えがない内容証明は無視しても大丈夫? 正しい対処法を弁護士が解説

草津市では、市内に在住の方を対象に暮らしの不安や疑問に答える「市民相談室(暮らしの相談)」を開設しています。弁護士・行政書士・税理士などの専門家に無料で相談できるので、日常生活を送る上で発生した困りごとや不安ごとが発生した場合、相談窓口のひとつとして上手に活用しましょう。
たとえば身に覚えのない内容の請求や通知が届いたら、誰でも驚いて対応に困ってしまうはずです。特に、ポストインではなく配達員が直接の手渡しで配達する「内容証明」で請求・通知を受けてしまうと、余計に不安を感じることでしょう。

身に覚えのない内容証明が送られてきた場合は、内容を確かめて適切に対応するのがベストです。通常の郵便物のように封も開けずに放置したり、内容もわからないまま受け取りを拒否したりといった対応は、思わぬ不利益を招く原因になります。

本コラムでは「身に覚えのない内容証明」をテーマに、予想されるトラブルや正しい対処法などについて、滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。

1、内容証明の仕組みと活用例

「内容証明」とはどのようなものなのでしょうか?
まずは内容証明の仕組みや活用例をみていきましょう。

  1. (1)内容証明とは?

    内容証明とは、日本郵便が提供するサービスのうち、書留郵便のひとつです。
    いつ、どのような内容の文書が、誰から誰あてに差し出されたのかを、受付時に差出人が作成・提出した謄本によって証明できます
    差し出時に同じ内容のものを3部用意して、それぞれを次のように使用します。

    • 受取人に郵送する
    • 差出人が保管する
    • 郵便局が証明用に保管する


    受取人が配達員から受け取る際には署名が必要で、差出人はいつ、誰が受け取ったのかを確認できます。

  2. (2)内容証明が活用されるシーン

    内容証明を利用することで、請求や通知について「届いていない」「見ていない」といった反論を避けることができます
    つまり、内容証明を受け取った側は「そんな通知は受けていない」という言い逃れができなくなります。

    内容証明が活用されるシーンとしては、次のような状況が考えられます。

    • 代金や貸金返済の支払いを求めたい
    • 期限までに賃貸住宅からの退去を求めたい
    • 離婚に際して条件面を通知したい
    • トラブルに対する慰謝料を請求する意思を伝えたい
    • 相続トラブルのように「いつ伝えた」のかが重要な場合の証明にしたい


    このほかにも、広く「伝えた」ことを証明したいときに、特にトラブル絡みのさまざまなシーンで活用されます。

2、身に覚えのない内容なら無視してもいい?

自宅などに送られてきた郵便物が、心あたりのある内容の請求や通知であれば、特に疑問を感じることはないでしょう。
ところが、内容証明を受け取った方にとって「身に覚えがない」と感じる内容であれば対応に困ってしまうはずです。
このような内容証明は無視しても大丈夫なのでしょうか?

  1. (1)内容証明に強制力はない

    内容証明は法的な強制力をもっていません
    たとえば「◯日までに代金◯◯◯◯円の支払いをしてほしい」という内容証明を受けたとしても、それに従わなかったからといっていきなり差し押さえなどができるわけではないのです。
    内容証明の効力は、あくまでも「いつ、誰に、どのような内容を通知したのか」を証明するにすぎず、その内容が正しいのか、それとも間違っているのかまで保障するわけではありません。
    たとえ無理な請求などを受けても、焦って対応する必要はないのです。

  2. (2)相手の姿勢をみる目安になる

    内容証明が送られてきたということは、差出人が「ちゃんと受け取ったのか」を確認し、証拠として管理したいという意志をもっている状態だと推察できます。
    代金の支払いや貸金の返済を求めるとしても、まずは普通郵便などで通知してくるのが一般的ですが、これを無視し続けると「ちゃんと通知は伝わっているのか」を確認しようとします。
    つまり、内容証明が送られてきたということは、「後々に裁判などで争う姿勢がある」という表明でもあるのです。

    身に覚えがないからといって無視していると、相手がより強硬な姿勢にでてくるおそれがあるので、焦らず、正しい対処が求められます。

3、内容証明を受け取り拒否するとどうなる?

内容証明は配達員が玄関先まで訪問して手渡しをします。
ここで、配達員に「受け取りません」と受け取りを拒否した場合、送られてきた内容証明はどうなってしまうのでしょうか?

  1. (1)相手に返送される

    受取拒否された内容証明は、差出人に返送されます
    また、不在から1週間の留め置き期間を経過した内容証明も返送されます。

    返送時には「受取拒否」や「不在」、「宛所不明」「転居先不明」といった理由も付されるので、差出人には「なぜ返送されたのか」が伝わります。

  2. (2)意思表示は「到達した」と判断されやすい

    内容証明は、どのような内容を伝えたのかを証明するものです。
    すると、受取拒否や不在によって返送された場合は「受取人に意思表示は到達したのか」が問題になります。

    裁判所の判断は一定ではありませんが、受取拒否については「意思表示が到達した」と認定されるケースが多数です
    不在については、不在連絡票などによって内容証明が送られている事実を認識できるため「到達した」と評価するケースがある一方で、到達していないとされるケースも存在します。

    「到達した」との最終判断を下すのは裁判所なので、安易に「受け取らなければ到達したことにはならない」と考えるのは危険です。

4、内容証明への「やってはいけない」三つの対応

内容証明が送られてきたときの「やってはいけない」三つの対応を挙げましょう。

  1. (1)対応①:相手の言いなりになってしまう

    内容証明に記載されている請求や通知に驚いてしまい、すぐにその要求に応えてしまうのは適切ではありません
    特に身に覚えのない内容にもかかわらず支払いをした場合、あとで「不当な請求だった」と気づいても返還は難しいでしょう。
    近年では、架空請求詐欺などの悪質な事案でも内容証明が用いられるケースがあるため、内容をしっかりと確認せずに対応するべきではありません。

  2. (2)対応②:感情的に対応してしまう

    身に覚えがないからといって、感情的な対応をしてしまうのも得策ではありません。
    何かしらの理由があって請求や通知を送っている相手にとっては、対象者のあなたが感情的な対応をすれば「悪質だ」ととらえ、さらに強硬な姿勢に出るおそれがあります。
    感情的な対応は控えて、内容に応じた冷静な姿勢をとりましょう

  3. (3)対応③:弁護士名義の内容証明を無視する

    内容証明を受け取ったら「だれ」の名義で作成されているのかをしっかり確認しましょう。
    もし、弁護士名義で作成されているものであれば、無視するのは危険です
    差出人は、あなたへの請求や通知のためにわざわざ弁護士に依頼しているのだから、その後も弁護士に対応を依頼するものと予測できます。
    弁護士のアドバイスによって内容証明を送っているのであれば、その後は裁判所の手続きに移行するおそれがあるため、内容をしっかりと確認したうえで適切に対応する必要があるでしょう。

5、内容証明が届いたときの正しい対処法

身に覚えがない内容証明が送られてきたら、どのように対処すべきなのでしょうか?

  1. (1)内容をしっかり確認する

    内容証明が送られてきたら、差出人に覚えがなくても必ず受け取って内容を確認しましょう
    差出人だけをみて「身に覚えがない」と判断するのは危険です。
    未払い代金の請求などでは、実際に利用した店舗名と法人の名義が異なる場合もめずらしくありません。
    心あたりのある相手ではない名義で内容証明が送られてくる例として、保証会社や債権回収会社、弁護士事務所などが考えられるでしょう。

    自分では「身に覚えがない」と思っていても、差出人は正当な権利を主張するために内容証明を送っているおそれがあります。
    内容を確かめずに無視したり、受取拒否をしたりといった対応は、不利な状況を招くでしょう。

  2. (2)弁護士に相談する

    身に覚えがない内容証明が送られてきた場合は、弁護士への相談をおすすめします。
    弁護士が確認すれば、差出人・相手方にどのような意図があるのかを正確に判断できるでしょう。

    実際に不当な請求であれば、弁護士から「要求に従う意思はない」と回答してもらい、以後の請求や通知を拒む旨を通知することが可能です
    それでも相手が権利を主張して裁判に発展するようなら、その対応も一任できます。

    内容証明を無視してさらに厳しい状況に追い込まれる、内容証明を受け取って感情的になってしまい不利な状況を招くといったトラブルを回避するためにも、まずは弁護士への相談がおすすめです。

6、まとめ

内容証明は、いつ、どのような内容の文書が、誰から誰あてに差し出されたのかを証明できる日本郵便のサービスです。
あなたにとって身に覚えがない差出人・内容の内容証明でも、相手は何らかの権利を主張したいものと推察できるので、むやみに放置するのは賢明ではありません。

身に覚えがない内容証明が送られてきて対応に困っているのであれば、ベリーベスト法律事務所・滋賀草津オフィスにご相談ください。
さまざまな法律のトラブルや困りごとを解決してきた実績のある弁護士が、内容証明が
意図するものを判断し、差出人への返答やその後のトラブルについても徹底的にサポートします。

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