民法が定める離婚原因とは? 離婚する方法やポイントを弁護士が解説
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「令和5年版草津市統計書」によると、滋賀県草津市の離婚件数は178件でした。離婚する際、相手が拒否した場合は、離婚訴訟を提起する必要があります。
民法では5つの離婚原因(法定離婚事由)が定められており、訴訟でいずれかが認められれば強制的に離婚することができます。特に相手が離婚を拒否している場合は、離婚原因となる証拠を確保することが重要です。
ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。


1、民法で定められた離婚原因(法定離婚事由)とは?
離婚訴訟(離婚裁判)によって強制的に離婚を成立させるためには、民法で定められた離婚原因である「法定離婚事由」が必要です。
法定離婚事由としては、以下の5つが定められています(民法第770条第1項)。
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(1)不貞行為
法定離婚事由の1つ目は「不貞行為」です。
「不貞行為」とは、配偶者以外の異性と自由な意思で性的関係を結ぶことを意味します。
ここでいう“自由な意思”とは強制や脅迫なく、自分の判断で行動することを意味します。
また、“性的関係”に当たるのは、性交(=性器の挿入)または性交類似行為(=実質的に性交と同視し得る性的行為)です。たとえば、キスや手をつなぐ行為などは性的関係に当たりませんが、肛門性交や口腔性交、裸で身体を触り合う行為などは性的関係に当たると考えられます。 -
(2)悪意の遺棄
法定離婚事由の2つ目は「悪意の遺棄」です。
「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく夫婦間の義務を放棄する行為です。夫婦間の義務とは、以下の3つの義務を指します。① 同居義務:同居して一緒に生活する義務
② 協力義務:収入の獲得や家事、育児などについて互いに協力する義務
③ 扶助義務:配偶者に対して、自分と同等の生活を保障する義務
たとえば、無断別居や育児放棄、収入に見合った生活費の負担を拒否することなどは、悪意の遺棄に当たると考えられます。
ただし、DV(暴力)を受けているために配偶者の承諾を得ず別居するなど、正当な理由がある場合は悪意の遺棄に当たりません。 -
(3)配偶者の生死が3年以上不明であること
法定離婚事由の3つ目は「配偶者の生死が3年以上不明であること」です。
長期間にわたって配偶者の生死が不明であるのに、婚姻を続けることを強いるのは酷です。そのため、配偶者が生死不明となってから3年が経過すれば、訴訟によって強制的に離婚することができます。 -
(4)配偶者が強度の精神病に罹(かか)り、回復の見込みがないこと
法定離婚事由の4つ目は「配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと」です。
「強度の精神病」の例としては以下が挙げられます。- 統合失調症
- 躁うつ病
- 失外套症候群
- 認知症
ただし、これらの疾病が強度の精神病に当たるかどうかは、実際の症状などに応じて個別に判断されます。
また、強度の精神病を理由とする離婚請求は、配偶者の安全を確保するなどの趣旨から制限される傾向にあります。たとえば最高裁昭和33年7月25日判決では、精神病に罹った配偶者の療養や生活などについてめどを立てない限り、離婚請求は認めないものとされました。
なお、2026年5月までに施行される改正民法により、「配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと」は法定離婚事由から削除される予定です。
改正民法の施行後は、配偶者の精神病については、次の項目で解説する「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たるかどうかが問題となります。 -
(5)その他、婚姻を継続し難い重大な事由
5つ目の法定離婚事由として「婚姻を継続し難い重大な事由」が挙げられています。
これは、婚姻の解消を認めるべき事情を幅広くカバーするもので、具体例としては以下が挙げられます。- DV(暴力)
- モラハラ
- 過度なギャンブル依存
- 長期間の別居
- 犯罪による服役
ただし、上記の事由がすべて婚姻を継続し難い重大な事由に当たるわけではありません。夫婦関係における事情を総合的に考慮したうえで、婚姻を継続し難い重大な事由に当たるか否かが判断されます。
2、民法で定められた離婚原因がないと、離婚できない?
法定離婚事由がない場合は、訴訟を通じて強制的に離婚を成立させること(=裁判離婚)はできません。
たとえば、以下のような事情は法定離婚事由に当たらないので、離婚理由として訴訟で主張しても、強制的な離婚は認められません。
- 配偶者が自分以外の異性に好意を持っているようだが、性的関係はまだない
- 性格やライフスタイルの不一致が原因で、夫婦生活を続けるのがつらい
- 配偶者の両親との折り合いが悪い
- 配偶者以外の異性を好きになった
自分では離婚原因があると思っていても、裁判所によってそれが認定されなければ、訴訟で強制的に離婚することはできません。
また、法定離婚事由が生じたことについて自分に責任がある場合(例:自分が不倫をした場合など)にも、訴訟による強制的な離婚は原則として認められません。
ただし、訴訟を通じた強制的な離婚が認められなくても、配偶者と話し合い、互いに合意すれば離婚することは可能です。
合意によって離婚を成立させる方法には、以下のパターンがあります。
② 調停離婚:家庭裁判所の離婚調停を通じて話し合い、合意すると離婚が成立
③ 和解離婚:離婚訴訟において和解することで、離婚が成立
離婚訴訟によって強制的な離婚が認められる見込みが薄いと思われる場合は、配偶者との合意による離婚を目指しましょう。
お問い合わせください。
3、離婚を切り出す前に準備すべきこと
スムーズに離婚を成立させるためには、配偶者に離婚を切り出す前の準備が大切です。以下の準備が整ってから、タイミングを見て離婚を切り出しましょう。
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(1)離婚原因があるかどうかを確認する
まずは法定離婚事由(離婚原因)があるかどうかを確認しましょう。
法定離婚事由があれば、訴訟によって強制的に離婚することを視野に入れつつ、離婚協議を有利に進めることができます。これに対して、法定離婚事由がない場合は、合意による離婚を成立させるために妥協することも検討すべきでしょう。
どのような方針で離婚手続きを進めるかを適切に判断するため、最初に離婚原因の有無を確認することが大切です。 -
(2)自分の主張を裏付ける証拠を確保する
離婚手続きを通じて主張する事柄については、その主張を裏付ける証拠を確保することが大切です。
たとえば配偶者の不貞行為を主張する場合は、配偶者が別の異性と性的関係を持っていたことを示す証拠を確保する必要があります。
写真・動画・音声・メッセージ・探偵の調査報告書などがあれば、有力な証拠になり得るでしょう。
財産分与を請求する場合は、相手の財産に関する資料を確保する必要があります。特に預貯金口座や証券口座の取引履歴は、漏れなく集めましょう。
また、弁護士に依頼すれば、弁護士のアドバイスを受けながら、裏付けとなる証拠をできる限り確保しましょう。 -
(3)離婚条件の希望を整理する
離婚に当たっては、以下のような離婚条件を取り決める必要があります。
- 財産分与
- 年金分割
- 慰謝料
- 親権
- 養育費
- 面会交流
離婚条件について何を希望するかは、人によって異なります。
「できる限り多くの金銭を得たい」「子どもの親権だけは何としても確保したい」「多少妥協しても、とにかく早く離婚したい」など、さまざまな希望があり得るところです。
何を優先するかを明確にしたうえで、相手に対して提案する離婚条件を整理しておきましょう。 -
(4)離婚後の生活のめどを立てる
婚姻中の生活費を相手の収入に依存していた場合は、離婚後の生活のめどを立てる必要があります。
十分な生活費を得る手段を確保したうえで、収入に見合った住居を探しましょう。子どもがいる場合は、転校(転園)などについても考えておく必要があります。
ただ、相手に一定の生活費用を請求できる可能性もあります。実際に生活費の請求をすることができるかどうかについて、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
自分で働くだけでは十分な収入が得られない場合は、家族に援助をお願いしたり、公的支援を利用したりすることも検討しましょう。公的支援制度については、市区町村役場などに相談すれば案内を受けられることがあります。
4、離婚問題について弁護士に相談すべき理由
離婚問題について弁護士に相談することには、主に以下のメリットがあります。
- 民法上の離婚原因(法定離婚事由)があるかどうかを正しい判断ができる
- 証拠集めのアドバイスを受けられる
- 離婚協議や裁判手続きの代行を依頼できる
- 労力やストレスが軽減される
- 有利な条件で離婚できる可能性が高まる
離婚を考え始めたら、早い段階で弁護士に相談しましょう。
5、まとめ
訴訟を通じて強制的に離婚を成立させるには、民法で定められた法定離婚事由(離婚原因)が必要です。法定離婚事由がない場合は、配偶者との合意による離婚成立を目指しましょう。
離婚手続きを進める際の方針や、離婚手続きに備えた証拠の収集などについては、弁護士のアドバイスを受けることをおすすめします。
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