離婚のパターン別に解説! 離婚前に押さえておくべきポイントと注意点

2020年07月29日
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離婚のパターン別に解説! 離婚前に押さえておくべきポイントと注意点

滋賀県草津市が公開している「平成30年版草津市統計書」によると、平成30年中の離婚件数は166件でした。

離婚という転機を迎える夫婦は決してめずらしくありませんが、離婚に至るまでには、解決しなければいけない問題も数多くあります。
むしろ、離婚に向けてアクションを起こしたことで、新たにトラブルを抱えることになってしまったという方もいるのではないでしょうか。

本コラムでは、パターン別に「離婚する際の注意点」を、滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。

1、「離婚の方法」に関する基礎知識

これから離婚を考えるうえで、まずはどのようにすれば離婚ができるのかを確認しておくことは大切です。

  1. (1)話し合いで解決できれば理由は必要ない

    民法第763条は「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる」と定めています。

    さまざまな離婚トラブルを耳にしていると、離婚について「裁判が必要」というイメージを抱きがちですが、実は離婚は夫婦双方の合意があれば可能です。
    双方が離婚に合意すれば、戸籍法に定められている離婚届を提出するだけで離婚が成立します。

    この方法を「協議離婚」と言います。

  2. (2)裁判で決着するには法定離婚事由が重要

    夫婦の話し合いで離婚に合意できなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。離婚調停では、調停委員が間に入り話し合いを進めることで、離婚成立を目指します。調停でも離婚が成立しなかったが場合は、裁判所に離婚の訴えを起こす必要があります。
    これが「裁判離婚」です。

    裁判離婚では、裁判官が双方の主張や証拠をもとに審理して離婚の可否を下します。
    裁判離婚の場合は民法770条に定められている、5つの条件のいずれかに離婚事由が該当していなければ離婚は認められません。この条件のことを、法定離婚事由と言います。

    • 配偶者に不貞な行為があったとき
    • 配偶者から悪意で遺棄されたとき
    • 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
    • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
    • その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき


    単に「性格の不一致」や「愛情が薄れた」といった理由を述べるだけでは離婚は認められないのです。

  3. (3)法定離婚事由と慰謝料の関係

    法定離婚事由にあたる行為をはたらいた配偶者のことを「有責配偶者」と呼びます。
    結婚生活を破綻させた当事者なので、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められません。
    また、法定離婚事由のうち、不貞行為、悪意の遺棄、婚姻を継続し難い重大な事由を起こした有責配偶者については、慰謝料請求を受ける対象にもなります。

2、【パターン1】性格の不一致が原因の場合の注意点

「性格の不一致」は離婚理由の代表格です。
平成30年の司法統計によると、離婚事件の総数は6万3902件でしたが、「性格が合わない」という動機で申し立てに至った件数は、そのうちの2万8706件を占めています。
およそ44.9%が性格の不一致を理由に離婚裁判を申し立てていることになりますが「法定離婚事由にあたらない」という原則があることには注意が必要です。

  1. (1)法定離婚事由にはあたらない

    民法770条が定めている法定離婚事由には「性格が合わない」という条件が挙げられていません。
    つまり、性格の不一致というだけでは裁判離婚は認められないということです。

  2. (2)話し合いでの決着になる

    性格の不一致を離婚理由とする場合、基本的には話し合いによる解決を目指すことになります。夫婦間の協議で決着しない場合は、「調停」を利用することになるでしょう。

    ただし、性格の不一致の裏に、法定離婚事由が隠れているケースもあります。判断に迷われるときは、弁護士へ相談することをおすすめします。

3、【パターン2】子どもがいる場合の注意点

夫婦間に未成年の子どもがいる場合は、離婚は単なる「夫婦の問題」ではなく「家族の問題」になります。
子どもに、異なる環境での生活を強いることになるケースが多いため、子どもの健全育成に対して著しい害が及ばないよう配慮しなければなりません。

  1. (1)親権争いが起きやすい

    未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、子どもの親権を決めなければなりません。
    原則的に子どもの親権は夫婦の協議によって決まるもので、協議離婚の場合は離婚届の「未成年の子の氏名」欄に、夫婦それぞれが親権を持つ子どもの氏名を記載するだけで届け出が完了します。
    ただし、子どもの親権は離婚において衝突が起きやすい問題で、離婚そのものには合意があっても親権の面において合意が得られず離婚協議が進まないケースも多数です。

    夫婦間の協議で親権が決められない場合は、調停委員を介した話し合いや、訴訟によって裁判官の決定を得ることになります。

  2. (2)養育費の取り決めが必要

    未成年の子どもがいる夫婦の離婚では、親権を得なかった一方が養育費を支払うことになります。
    養育費の金額は、子どもの人数・年齢、養育費を負担する義務者の収入などから総合的に判断されます。親権者の決定とともに養育費についても争いがある場合は、弁護士のサポートが必要でしょう。

    また、養育費の取り決めがなされながらも支払いに応じないケースが問題視されており、不払いに対しては厳しい対処があると心得ておく必要があります。

4、【パターン3】不貞行為(浮気・不倫)が原因の場合の注意点

配偶者以外の人と肉体関係を持つことを、不貞行為と言います。不貞行為が原因で離婚を検討することになった場合、有責配偶者が自分なのか、それとも配偶者なのかによって気をつけるべきポイントが大きく変化します。

  1. (1)不貞行為をした側(有責配偶者)の場合

    自分が不貞行為をはたらいてしまった有責配偶者であれば、慰謝料などの負担がのしかかってくるおそれが高くなるでしょう。

    弁護士に相談して、適切な相場の範囲内で決着できるようにサポートを依頼するのが賢明です。

  2. (2)不貞行為をされた側の場合

    自分が不貞行為を受けた場合は、相手への慰謝料などの請求を検討することになります。
    配偶者が不貞行為を否認するおそれがあるので、不倫相手とのメッセージのやり取りや夫婦間の協議の録音などを証拠として確保する必要があるでしょう。

    協議で慰謝料や養育費などを決定した場合は、離婚協議書を作成して公正証書化することをおすすめします。
    口約束はもちろん、念書や覚書といった書面でも問題がないわけではありませんが、配偶者が支払いを拒んだ場合の対抗手段としては心もとないでしょう。
    公正証書化した離婚協議書があれば、給与の差し押さえなどの強制的な手続きもスムーズです。

5、【パターン4】配偶者が専業主婦(主夫)の場合の注意点

配偶者が専業主婦・専業主夫の場合、相手に定期的な収入がないことから金銭的な負担が大きくなる事態が想定されます。

  1. (1)婚姻費用分担請求を受けるおそれがある

    専業主婦・専業主夫には、生活の基盤となる収入がありません。
    そこで、同居しているときはもちろんのこと、離婚を目指して別居生活をしている場合でも、家族の生活費や子どもの学費といった生活にかかる費用である「婚姻費用」の負担が発生します。

    婚姻費用の金額は、裁判所が公表している「婚姻費用算定表」をもとに、夫婦のみの場合のほか、子どもの人数や年齢、義務者の収入額などを総合的に考慮して決定します。
    算定表に基づいた金額を負担するのが難しい特別な事情があるケースなどでは、合理的・客観的にその事実を証明する必要があります。
    一方で、配偶者が標準的な婚姻費用の額を超えて請求してきた場合は、やはり同じように「なぜ高額が必要なのか」を、配偶者側が証明する必要があります。

  2. (2)扶養的財産分与も考慮することになる

    離婚後、配偶者が経済的に自立できる見込みがない場合は、財産分与として生活費の補助となる定期金を一定期間にわたって支払うことになります。
    これが「扶養的財産分与」です。

    通常、離婚後の生活を支えるための資金確保としては、慰謝料や夫婦の共同財産を清算する財産分与で行われます。しかし、離婚のケースによっては、慰謝料の発生もなく、分割するべき財産がないケースもあるでしょう。そういった場合に、離婚の条件として扶養的財産分与が定められることがあります。

    扶養的財産分与は、離婚した配偶者の生活を扶助する性格のものなので、たとえば「元配偶者や子どもの生活を扶助するために、住宅ローンの支払いを続けてマイホームを維持する」といった対応をとる例もあります。

    協議離婚の場合は扶養的財産分与も夫婦双方の協議によって決定することができますが、無用に重い負担にならないよう、弁護士にアドバイスを受けることをおすすめします。

6、まとめ

離婚のパターン別に注意点を解説していきましたが、総じて「勢いに任せて結論を急ぐと重い負担が生じるおそれがある」と言えるでしょう。
特に、夫婦双方の協議のみによる協議離婚では、慰謝料・養育費・親権・婚姻費用・財産分与といった大切な決め事を自分たちだけで決断することになります。
一方的に重い負担が生じてしまったり、主張できる権利を棒に振ってしまったりするケースも少なくないので、協議離婚の場合でも法律の専門家である弁護士への相談をおすすめします。

スムーズな離婚を目指したい、一方的に負担が重くなるような事態を回避したいとお望みであれば、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士にお任せください。
離婚トラブルの解決実績が豊富な弁護士が、離婚成立に向けて全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています