債権回収をスムーズに進めるには? 具体的な方法を弁護士が解説
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事業を営んでいると、契約した取引相手が約束どおりにお金を支払わないというケースに遭遇することも少なくありません。
民法第415条では、支払うと約束したお金を債権者(お金を受け取る権利のある人)に支払わないケースなどの約束違反、つまり債務者(お金を支払わなければならない人)が債務の支払いを行わないことを、「債務不履行」といいます。
債務不履行の形態には、履行が可能であるのにもかかわらず債務者の帰責事由により履行すべき期間が過ぎても履行しない「履行遅滞」から、悪意ある詐欺までさまざまな形態があります。いずれにせよ、債権者にとってベストなのはスムーズに債権回収を進めることです。
本コラムでは、債権回収をスムーズに進めるための具体的な方法について、べリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。
1、債権回収はどのように進める?
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(1)債務者への督促
まずは、債権者から債務者へ直接債権回収をするための督促を行います。
電話や直接の会話でもよいのですが、督促をした証拠ともなるメールまたは手紙が好ましいでしょう。なお、債務者に督促をした事実を残すためには、「内容証明」で送る方法が確実です。 -
(2)強制執行(強制履行)
強制執行(強制履行)とは、債権者が裁判所などの力を借りて債務者に債務を強制的に履行させる手続きのことです。強制執行は、後述する裁判所の手続きを経て進められます。
強制執行をするためには、「債務名義」が必要になります。債務名義は裁判所の確定判決のほか、仮執行宣言付きの支払い督促、調停証書、和解調書、強制執行認諾文言付きの公正証書があります。
強制執行では不動産・債権については裁判所が、動産については執行官が行います。
不動産の強制執行については、債務名義に基づき債務者が所有する不動産を、それが存在する地域を管轄する地方裁判所に対して強制競売を申し立てます。
申し立てが適法であると認められると、それを執行する裁判所は開始決定を行います。それに基づき、不動産登記簿謄本には差し押さえの登記がされます。なお、不動産執行には、不動産を売却して債権者に配当する強制競売と賃料を配当する強制管理の方法があります。
債権の強制執行については、債務者が居住する地域を管轄する裁判所に申し立てると、債務者が第三債務者(債務者に対して債務を有する第三者)に対して有する債権に差し押えを行います。
債務者に対して差押命令が送達されたときから一定期間を経過すると、債権者は第三債務者から直接債権を取り立てることができます。なお、売掛金のように客観的な金額のある債権を差し押さえた債権者は、裁判所の決定により第三債務者から債権を異動させる「転付命令」の申し立てができます。
動産の強制執行については、動産が所在する地方裁判所の執行官に対して申し立てを行います。申し立てが適法であれば、執行官はこれを差し押さえ売却し債権者に配当します。
2、当事者間で債権回収を行うときの注意点
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(1)自力救済は禁止
債権者が力ずくで債権回収を行い、債権の内容を実現することを「自力救済」といいます。しかし、自力救済を認めると力が世の中を支配することになってしまうため、自力救済は認められていません。
したがって、昔のテレビドラマにあるような、債務者の家に押し入り債務弁済のカタとしてめぼしいものを奪うような行為は絶対にしてはいけません。
債務者が債務履行に合意しないときに債務者ができる債権回収の手段は、先述した強制執行になります。 -
(2)債務者の財務状況をチェック
債権回収を進めるに際しては、債務者に弁済できる資力があるかどうかを確認しておく必要があります。
債務者が債務を弁済できない「履行不能」の状態にある場合、債務者は債務を弁済したくてもできないわけですから、その履行を強制することはできません。これは、一部の債務を弁済した「不完全履行」の場合も同様です。
ただし、債務が履行不能となった場合でも、それを「貸倒損失」として損金算入することで、税務上のメリットを享受することができます。
なお、このような事態を防ぐためには債務者と信用で取引する前に債務者の資力・弁済力を調査しておくべきであることは言うまでもありません。 -
(3)時効に注意
民法第144条以下に規定する時効とは、「ある状態が一定期間続いた場合、たとえその状態が真実の権利関係とは異なっていても、それを認めようとする制度」のことです。
つまり、債務者が当初の契約どおりの債務を履行しなかったとしても、それが一定期間続いたことで債務が消滅、債権者からすると「債権」が消滅してしまうということになります。これを、「消滅時効」といいます。
消滅時効を援用した債務、つまり時効となった債務は、債務者が当初の契約どおりに債務を履行すれば法的に有効な弁済つまり債権回収となります。しかし、債務者が履行しない場合は、債権者はこれを裁判所に訴えることが基本的にできません。これを「自然債務」といいます。
3、裁判所を通じて債権回収を行う方法
催告しても契約の相手方が債務を履行せず、債権回収がスムーズに進まない場合は、債務者との合意したうえで販売した商品などを引き揚げるなどの対応が必要になります。
しかし、先述のとおり「自力救済」は禁止されています。したがって、債権回収に向けて契約の相手方から協力が得られない場合は、裁判所を通じて強制的な債権回収の手続きをする必要があります。
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(1)支払い督促
「支払い督促」とは、簡易裁判所の裁判所書記官に支払い督促の申し立てを行い、簡易裁判所から債務者に対して債務の履行をするよう命令を出してもらう制度です。
債務者に支払い督促が送達された日の翌日から2週間以内に債務者から異議が出ない場合、支払い督促は一定の手続きを経ることで確定判決と同じ効力を持ち、強制執行が可能になります。
債権回収における支払い督促は、費用が安く簡易かつ迅速な手続きです。しかし、債務者から異議が出ると通常の訴訟に移行するため、かえって時間がかかってしまいます。 -
(2)即決和解
「即決和解」とは起訴前の和解ともいわれ、簡易裁判所が関与して行う和解の一種です。
和解が成立した場合、簡易裁判所にその内容を調書に記載してもらうことにより、強制執行が可能になります。 -
(3)調停
「調停」とは、当事者が裁判所に出頭し、調停委員会に間に入ってもらい話し合いを行う手続きです。
調停で合意が成立した場合、調停証書が作成されて強制執行が可能になります。
なお、調停には強制力がありません。このため、相手方が話し合いに応じなかったり合意に至らない場合は決着せず、裁判手続きに移行することになります。 -
(4)訴訟手続き
裁判所に訴状を提出して、当事者たちが裁判所に出頭して口頭弁論を行い、判決の言い渡しを受ける手続きです。判決が確定すると、その判決を債務名義として強制執行することが可能になります。
4、債権回収を専門業者に依頼する際の注意点
どうしても債権回収が進まない場合、債権回収を専門業者に依頼することも手段のひとつです。主な債権回収の専門業者は以下のとおりですが、どこに依頼しても相応のコストが発生することに注意が必要です。
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(1)債権回収会社
債権回収会社はサービサーともいい、債権者に代わって債権回収を行う会社です。
債権回収会社は「債権管理回収業に関する特別措置法」に基づき認定されています。
その主な要件は資本金が5億円以上であること、1名以上の弁護士が取締役に就任していること、暴力団などの反社会的組織とはつながりがないことです。
なお、認定司法書士や弁護士と異なり、債権回収会社には債権者の代理権が認められていません。 -
(2)認定司法書士
司法書士とは、登記や供託を専門とする資格です。
司法書士試験に合格することに加えて、法務大臣からの認定を受けることで、簡易訴訟代理等の関係業務を行うことが認められた司法書士のことを「認定司法書士」または「法務大臣認定司法書士」といいます。なお、ほとんどの司法書士は認定司法書士です。
一連の多重債務者問題を受け、認定司法書士には一定の借金の整理手続きに関する業務および民事訴訟の交渉、和解、代理業務が認められています。ただし、認定司法書士に認められている民事訴訟の交渉、和解、代理業務は債権・債務の金額が140万円以下に限定されています。 -
(3)弁護士
弁護士は依頼者の一切の代理権を持つことが法律で認められており、幅広い範囲で債権回収を行うことができます。このため、債権・債務の額金に関係なく債権者の代理として債務者と交渉することはもちろんのこと、債権者に代わって裁判上の一切の手続きを行うことが可能です。
5、まとめ
債権回収をスムーズに行うためには、弁護士への依頼がより良い選択肢といえます。
債権回収に法的な知見と対応経験が豊富にある弁護士であれば、さまざまな債権回収業者のなかにあってももっとも幅広い対応力をもって、債権回収をスムーズに行うことが期待できます。また、先述したように裁判上の手続きを代理することも可能です。
べリーベスト法律事務所では、債権回収に関する専門の弁護士集団を擁しています。債権回収にお悩みのときは、ぜひべリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士までご相談ください。あなたのために、ベストを尽くします。
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