独身の叔父が亡くなったら相続人は誰? 注意点や遺産相続の流れを解説

2025年06月04日
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独身の叔父が亡くなったら相続人は誰? 注意点や遺産相続の流れを解説

2023年の滋賀県草津市の出生者数は1032名、死亡者数は1155名でした。

配偶者や両親など、身近な方が亡くなった場合は、遺産の相続を誰が行うのか、イメージがしやすいかもしれません。では独身の叔父が亡くなった場合は、誰が相続人になるのでしょうか。

本記事では、独身の叔父が亡くなった場合の相続について、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。

出典:「令和5年版 草津市統計書」(草津市)


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1、独身の叔父が亡くなったら、相続人は誰になる?

独身の叔父が亡くなった場合、遺産を相続する方は民法で定められた相続順位に従って決まります。
多くの場合は叔父の兄弟姉妹が相続人になりますが、兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥や姪が相続人になるケースもあります。詳しく説明しましょう。

  1. (1)親族内での相続順位

    まず、相続人の基本的な決め方について解説します。
    民法によって、被相続人(亡くなった方)の遺産を相続する権利を認められた人を「法定相続人」といいます。法定相続人になるのは、原則として被相続人の配偶者と、下記の順位に従った最上位者です。

    第1順位:被相続人の子
    ※被相続人の子がすでに死亡、相続欠格または廃除によって相続権を失っている場合は、その子(=被相続人の孫)が代襲相続人となります。また、被相続人のひ孫以降による再代襲相続も認められています。

    第2順位:被相続人の直系尊属
    ※被相続人との親等が異なる直系尊属がいる場合は、もっとも親等が近い者のみが相続人となります(例:被相続人の父母が、祖父母よりも優先される)。

    第3順位:被相続人の兄弟姉妹
    ※被相続人の兄弟姉妹が死亡、相続欠格または廃除によって相続権を失った場合は、その子(=被相続人の甥・姪)が代襲相続人となります。
  2. (2)独身の叔父が亡くなった場合、兄弟姉妹が相続人になることが多い

    独身の叔父が亡くなった場合、法定相続人となる配偶者や、第1順位の子どもはいません。
    ※一度は結婚して、離婚している場合や、結婚したことが無くても認知された婚外子がいる場合もありますので、念のために、子どもの有無を確認する必要はあります

    また、叔父が高齢だった際は、叔父の父母などの第2順位の直系尊属も亡くなっているケースが多いでしょう。
    そのため、第3順位である叔父の兄弟姉妹が相続人となる可能性があります

  3. (3)兄弟姉妹が亡くなっている場合は、甥や姪が相続人になることがある

    本来であれば相続人になるはずだった兄弟姉妹が、叔父の死亡時点ですでに亡くなっているときは、代襲相続が発生します。この場合は兄弟姉妹の子どもである、叔父の甥や姪が相続人となります

2、甥・姪として相続人になったら、知っておくべきこと

甥・姪として叔父の遺産を相続する場合は、スムーズかつ適切に相続手続きを進めるため、以下のポイントを理解しておきましょう。

  1. (1)甥・姪には遺留分がない

    被相続人の配偶者、子ども、その代襲相続人、直系尊属には、法定相続分に対して一定割合の遺留分が認められています(民法第1042条第1項)。
    「遺留分」とは、相続などによって取得できる財産の最低保障額です。遺留分は遺言書よりも優先されます。そのため「長男に全財産を譲る」といった偏った遺産配分が遺言書で指示されていた場合、遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求が可能です。

    これに対して、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められていません。また、被相続人の兄弟姉妹をその子(=被相続人の甥・姪)が代襲相続する場合も、遺留分は認められない点にご注意ください。

  2. (2)甥・姪の子による再代襲相続は認められない

    代襲相続人が死亡、相続欠格または廃除によって相続権を失った場合に、さらにその子が相続人となることを「再代襲相続」といいます。
    被相続人の直系尊属である代襲相続人(孫など)が死亡、相続欠格または廃除によって相続権を失った場合は、その子(ひ孫など)による再代襲相続が認められています(民法第887条第3項)。

    これに対して、被相続人の甥・姪が死亡、相続欠格または廃除によって相続権を失った場合には、さらにその子による再代襲相続は認められません
    たとえば独身の叔父が亡くなった際、被相続人の兄弟姉妹やその甥・姪がすでに全員亡くなっていた場合には、甥・姪の子どもが遺産を相続することはできません。

  3. (3)甥・姪の相続税は2割加算される

    被相続人の一親等の血族(=子、父母)もしくはその代襲相続人(=孫など)、または配偶者以外の方が相続人となる場合、その方の相続税額には2割加算されます。

    そのため、叔父の遺産を甥・姪として相続する場合も、相続税額の2割加算の対象となる点にご注意ください。

    参考:「No.4157 相続税額の2割加算」(国税庁)

  4. (4)相続税の申告期限は「10か月以内」

    相続財産などの総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告および納付が義務付けられています。基礎控除額の計算方法は、以下のとおりです。

    基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数


    また、叔父が所有していた土地について小規模宅地などの特例の適用を受ける場合も、相続税の申告が必要です。
    相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です。期限内に忘れずに相続税の申告を行いましょう。

    参考:「B1-2 相続税の申告手続」(国税庁)

  5. (5)債務が多すぎる場合は相続放棄も検討すべき

    多額の借金が残っているなど、叔父の資産よりも債務がはるかに多い場合は、相続放棄も検討しましょう。相続放棄をすれば、叔父の債務を相続せずに済みます

    相続放棄を行うには、原則として相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所に対して申述書や戸籍謄本類などを提出しなければなりません。
    被相続人の甥・姪が相続放棄をする場合は、提出すべき戸籍謄本類の部数が多く、集めるのに時間がかかることもあるかもしれません。弁護士のサポートを受けながら、期限に間に合うように相続放棄の手続きを行いましょう。

3、独身の叔父が亡くなったときの遺産相続の流れ

独身の叔父が亡くなった場合に、甥・姪として遺産を相続する手続きの流れは、大まかに以下のとおりです。

  1. (1)遺言書の確認

    遺言書がある場合は、原則としてその内容のとおりに遺産を分けます。まずは遺言書があるかどうかを確認しましょう。遺言書は、遺品として残されていることがあるほか、法務局や公証役場に保管されていることもあります。心当たりがある場所は漏れなく探してください。

  2. (2)戸籍謄本類の取得・法定相続人の確認

    遺産分割を行う際は、相続人が誰であるかを確認する必要があります。戸籍謄本類を取り寄せたうえで、1章でご紹介した相続順位に従って、叔父の遺産について相続権を有する方を漏れなく確定しましょう

    戸籍謄本類の見方や相続順位のルールについて不慣れな方は、相続人の見落としが生じてしまうおそれがあります。弁護士に相談すれば、漏れなく相続人を確認することができるので安心です。

  3. (3)遺産の調査

    遺産分割をスムーズに完了するためには、遺産分割協議に先立って、叔父の遺産を漏れなく把握することが大切です。
    預貯金・不動産・有価証券などの財産のほか、叔父から生前に聞いていた話や遺品に含まれる資料なども調査し、すべての遺産をリストアップしましょう。

    弁護士であれば、遺産が複雑かつ多岐にわたったときも、漏れなく把握できるようにチェックができます。

  4. (4)遺産分割協議

    相続人と遺産が把握できたら、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。遺言書がない場合はすべての遺産について、遺言書がある場合は分割方法が指定されていない遺産について、相続人全員で分割方法を話し合います。

    遺産分割の合意ができたら、その内容をまとめた遺産分割協議書を作成し、相続人全員で署名と押印を行いましょう
    もし遺産分割協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停や審判を通じて遺産分割の方法を決めます。

    弁護士は、遺産分割についての協議・調停・審判の対応が可能です。弁護士が適切に対応することにより、スムーズかつ適正な条件で遺産分割を実施できる可能性が高まるでしょう。

    参考:「遺産分割調停」(裁判所)

  5. (5)遺産の名義変更手続き

    遺産分割協議や調停・審判で決まった分割方法に従い、遺産の名義変更を行います。

    名義変更手続きの内容は、遺産の種類によって異なります。たとえば、預貯金は金融機関での相続手続き、不動産は法務局に対する相続登記(所有権移転登記)の申請が必要です。

  6. (6)相続税の申告

    相続財産などの総額が基礎控除額を超える場合や、小規模宅地等の特例の適用を受ける場合には、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告を行いましょう

    相続税の申告は、税理士に依頼するのが一般的です。弁護士に相談すれば、連携先の税理士を紹介してもらえます。

4、相続トラブルを弁護士に相談するメリット

遺産相続について弁護士に相談することの主なメリットは、以下のとおりです。

  • 相続人を漏れなく調査できる
  • 遺産の調査をサポートできる
  • 弁護士が間に入ることで、相続人同士の対立が緩和される
  • 遺産分割協議書をきちんとした内容で作成できる
  • 専門的な調停や審判の手続きにも適切に対応できる
  • 相続税の申告や相続放棄など、期限のある手続きについて間に合うように対応できる
  • 労力やストレスが大幅に軽減される
など


叔父の遺産を相続することになった場合は、相続手続きについて速やかに弁護士へ相談しましょう

5、まとめ

独身の叔父が亡くなった場合は、叔父の子どもも両親もいないために、兄弟姉妹が相続人となるケースが少なくありません。一方、兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合は、甥・姪が叔父の遺産を相続するケースもあります。

甥・姪として叔父の遺産を相続する場合は、遺留分がないことや、相続税が2割加算される点などに注意しましょう。スムーズに相続手続きを完了するためには、弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所は、遺産相続に関するご相談を随時受け付けております。叔父の遺産を相続することになりそうな方は、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています