遺産相続の相談は誰にすべき? 相談先を選ぶ際の注意点や準備
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滋賀県の統計によると、令和4年の草津市では1079名の方が亡くなられたことが報告されています。草津市だけでも、相応の遺産相続の手続きが発生したと推測されます。
しかし、実際に相続がはじまってみると「どこに相談すればいいのかわからない」と悩む方も多いでしょう。遺産相続の相談先は、状況に合わせて適切に選ぶ必要があります。
本コラムでは遺産相続の相談先の選び方や注意点について、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。
1、遺産相続の相談先は誰にすべき? 候補となる6つの相談先
遺産相続をすることになれば、さまざまな手続きが必要になります。自分だけでは、どのような手続きをすればよいのかわからない方もいるでしょう。
遺産相続の相談先には、
① 市役所・区役所
② 銀行
③ 司法書士
④ 弁護士
⑤ 税理士
⑥ 行政書士
の6つが考えられます。
それぞれの特徴やメリット・デメリットについて確認しておきましょう。
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(1)相続全般の相談なら市役所・区役所
相続全般の基礎知識について知りたい場合には、市役所・区役所に相談するのがおすすめです。市役所や区役所などの公的機関では、定期的に無料相談会が開催されていることがあります。無料相談会では、弁護士や司法書士、行政書士、税理士などの法律の専門家に相談をしてアドバイスをもらうことができます。各自治体のホームページや広報誌を確認してみましょう。
・ メリット
市役所・区役所などの公的機関で相談する一番のメリットは、誰でも気軽に相談できるということです。また、公的機関が相談内容や個人情報の管理をするため、他の人に知られたくない情報を保護できるという安心感があります。相談時間が30分程度に限られていることもありますが、簡単な質問をするのであれば十分な時間といえます。そのため、何から手を付けるべきか、今後どのようにしたらよいのか全くわからない場合、最初の相談先として利用するのがよいでしょう。
・ デメリット
公的機関の無料相談会は、すぐに予約がいっぱいになってしまい、なかなか相談できないというケースもあります。また、相談員に今後の手続きの依頼をしたいと思ったとしても、その場で依頼することはできません。官公庁を介した相談員には相談者に名刺などを渡す宣伝行為が禁止されているからです。
また、相談したとしても一般的な回答のみ得られるだけで、トラブルが発生していた場合などの個別的・具体的なアドバイスを得られないことがあります。 -
(2)口座の相続手続きなら銀行
銀行でも無料相談を受け付けている場合があります。銀行では、主に資産に関する相談をすることができます。そのため、口座を持っている場合や資産がある場合の相談先の候補のひとつになります。
ただし、すべての銀行が遺産相続の相談を受け付けているわけではないため、事前に問い合わせてみましょう。・ メリット
メガバンクや地方銀行は利便性の高い場所に店舗をかまえていることが多いため、気軽に行くことができるでしょう。また、市役所などの公的機関とは異なり、電話窓口を設けているところも多く、平日だけでなく、土日祝日に相談できる銀行も少なくありません。
そのため、平日の昼間は仕事で忙しいから行けないという人でも銀行なら相談できる可能性があります。さらに銀行では、どの支店に行ったとしてもマニュアルがあるため、同じようなサービスを受けることができます。
・ デメリット
全国どこにでもあり、いつでも相談できる銀行ですが、費用が高額になる可能性が高いというデメリットがあります。また、銀行員は、弁護士・司法書士・税理士のような国家資格を有しているわけではないため、法律的な相談に対して的確な回答を得ることができない場合があります。
専門的・複雑なケースは、銀行ではなく、直接専門家に依頼するのが早く手続きを終わらせることができます。 -
(3)不動産の相続もあるなら司法書士
司法書士とは、登記や法務局、裁判所に提出する書類を作成することができる国家資格を有する者をいいます。なお、「(6)自分で手続きを進めるつもりなら行政書士」でも後述しますが、行政書士との違いは、不動産の名義変更の手続きを代理できる点です。
・ メリット
司法書士は、不動産の名義変更をすることができます。「両親が住んでいた実家がある」「誰も使っていない土地がある」といった不動産を相続する際には、所有者の名前に名義変更しなければなりません。なお、令和6年4月1日から、相続登記が義務化されました。登記の期限は、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内です。もし相続登記をしないと、10万円以下の過料が発生する可能性があります。
・ デメリット
不動産の名義変更など登記の手続きだけする場合には司法書士への相談でも問題はありません。しかし、遺産分割で相続人同士がトラブルになってしまった、相続放棄や限定承認をしたいという場合に対応できません。
手続きの途中で問題が生じてしまうと、別途、弁護士を探して依頼する必要が出てきてしまうかもしれません。ベリーベスト法律事務所には司法書士も所属しています。ひとつの窓口で必要に応じて連携も可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。 -
(4)相続すべてを任せたいなら弁護士
弁護士は、法律問題すべてを依頼することができます。たとえば、不動産の名義変更の依頼も相続人同士のトラブルも遺産の調査もすることができます。
・ メリット
弁護士に依頼するメリットは、すべての手続きを一任することができるということです。相続人の調査や、財産目録の作成、相続放棄や限定承認をしたいと考えた際の書類の作成から提出まで、相続にまつわる一連の流れのすべて依頼することができます。
また、相続人同士でトラブルになった場合には、裁判手続きの準備や他の相続人との交渉をすることができます。相続問題の代理人となって相手と交渉することは、法律上、弁護士にしか許されていません。
・ デメリット
弁護士に依頼するデメリットとして、費用が司法書士や行政書士に比べて高いという点が挙げられます。ただし、初回の相談料は無料としている事務所もあるため、まずは弁護士に相談した際に費用についても詳しく聞き、依頼するのが今後の金銭的負担の面からも安心です。 -
(5)相続税の疑問があるなら税理士
税理士は、税金についての専門的な国家資格です。そのため、相続税など相続と関連する税金について知りたい場合には、税理士に相談するのが解決の近道です。
・ メリット
相続税を正確に計算できるのは、税理士だけです。税金の内訳にはさまざまな項目があり、司法書士や行政書士だけでなく、弁護士であっても概算しかわからないことがあります。正確な金額を納税しなければ追徴課税などのペナルティーが発生するおそれもあるため、納税については、税理士に相談することをおすすめします。
・ デメリット
相続税がいくらになるか、という前にそもそも相続税が発生するのかという問題もあります。相続税を計算するためには、どのような財産があるのか調査が必要です。もし相続税が発生しないとなれば、相談へ行ったのが無駄足になってしまう可能性があります。
そのため、相続税について知りたいと思っていてもまずは弁護士や公的機関の無料相談などへ行き、相続税が発生する可能性があるのか、聞いてみるのがよいでしょう。なお、ベリーベスト法律事務所には税理士も所属しているため、必要に応じてスムーズな連携が可能です。 -
(6)自分で手続きを進めるつもりなら行政書士
行政書士とは、官公署に出す特定の書類作成の代行ができる国家資格です。司法書士や弁護士とは異なり、不動産の名義変更や、相続放棄・限定承認の書類作成提出、相続税の申告などができません。そのため、行政書士に作成してほしい書類が明確な場合の相談先におすすめです。
・ メリット
行政書士事務所は、全国どこにでもあるため、相談するハードルが低いといえます。また、費用も他の士業に比べて安価なことが多いでしょう。弁護士や司法書士に依頼が難しい戸籍謄本だけがほしい、家系図を作りたいなど明確な要望があれば、比較的安い費用で手続きを進めることができます。
・ デメリット
行政書士に依頼した場合、手続きのすべてを基本的に自分で行わなければなりません。手続きに不備があり、手続きの期限を過ぎてしまっても自己責任になります。また、手続きの期限ギリギリにやっぱり手続きできないから弁護士に依頼しようと思っても断られてしまう可能性があります。
2、遺産相続の相談先を選ぶ際の注意点
遺産相続の相談先は、それぞれの事情によって選ぶことが重要です。自分の状況と合わない相談先に行ってしまうと、思った結果を得られないことがあります。そこで、遺産相続の相談先を選ぶ際の注意点を紹介します。
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(1)公的機関は一般的な回答しか得られない
市役所や区役所などの公的機関での相談では、一般的な回答しか得ることができません。
相談時間も30分程度であり、延長することができない場合が多いです。そのため、すでにトラブルが起こっている場合や自分の状況に合わせた回答を得たい場合には、公的機関以外の相談先を選ぶようにしましょう。 -
(2)銀行では専門的・複雑な相談は断られる可能性がある
銀行では、専門的な問題や複雑な相談は断られてしまうことがあります。
たとえば、複数の相続人がいて、誰がどの財産を相続するかトラブルになっているケースや隠し子がいて、相続の話し合いが進まないなどです。このような場合には、銀行では問題を解決することができないため、相談を断られることがあります。 -
(3)不動産の名義変更だけしたい場合は司法書士に依頼する
相続した不動産の名義変更だけをしたい場合には、司法書士に相談するのがよいでしょう。司法書士は、登記業務を専門にしていることが多いため、スムーズに手続きしてもらえる可能性が高くなります。
ただし、それ以外の相続問題が起こった場合には司法書士では対応できないこともあるため、不安な方は弁護士に相談することをおすすめします。 -
(4)正確な相続税の計算は税理士しかできない
相続税を知りたい場合には、税理士事務所に相談へ行きましょう。税理士であれば、相続税の正確な計算をすることができます。また、相続税申告のための書類作成も依頼することができます。
もっとも、遺産分割がまだできていない場合には税理士事務所へ行っても問題を解決することができません。そのため、弁護士事務所に相談へ行き、遺産分割が終わったら税理士事務所を紹介してもらうというのも選択肢のひとつです。 -
(5)行政書士は遺産分割を取り扱えない
行政書士に相談へ行くときには、ある特定の書類を作成してほしいと要望が明確な場合だけにしましょう。行政書士は、書類の作成しかすることができません。そのため、基本的な手続きはすべて自分で行う必要があります。
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(6)遺産相続に関して実績があるか確認する
自分の状況に応じて、相談先を選ぶ際に必ず遺産相続に関して実績があるか確認しましょう。司法書士事務所や税理士事務所、行政書士事務所だとしてもすべての事務所が遺産相続について詳しいとは限りません。そのため、せっかく相談へ行ったのによくわからなかったということになってしまいます。
そこで、実績がある事務所であれば、スムーズに相談や手続きができます。
3、遺産相続について相談する前に準備すべきこと
弁護士などに相談する際、事前準備ができていなければ、相談先で的確なアドバイスをもらうことができません。そこで、遺産相続について相談する際に準備すべきものを確認しておきましょう。
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(1)被相続人の配偶者や子どもなど相続人の名前と住所をまとめる
遺産分割協議について弁護士に相談する際は、被相続人の配偶者(夫や妻)や子どもなど、すべての相続人の名前と住所を調べていきましょう。遺言がない場合には、配偶者や子どもが法定相続人として遺産を相続することになるため、名前や住所をもとに各相続人へ弁護士が連絡します。
そもそも相続人が誰なのかが不明瞭な場合は、相続人調整から依頼したい旨を相談しましょう。 -
(2)わかる範囲で遺産の情報を調べておく
わかる範囲で遺産の情報を調べておく必要もあります。
概算でも遺産がどれだけあるのかわかれば、相続放棄すべきか、限定承認すべきか、単純承認すべきか、アドバイスをもらうことができます。これらの選択は、原則として相続開始から3か月以内に行わなければなりません。
相談時に今度どのようにすべきか見通しを立てることでスムーズに手続きを進めることができます。 -
(3)故人の戸籍謄本や預金通帳の残高証明などの必要書類を集める
故人の戸籍謄本や預金通帳がある場合には、まとめて持参した方がよいでしょう。
戸籍謄本を確認することで誰が相続人になるのか判断することができます。また、預金通帳の残高を確認することでどれくらい財産があるのか、概算のめどを立てることができます。 -
(4)まずは今ある情報を整理して問い合わせてみる
情報が集まらないという場合でも早期に問い合わせてみましょう。遺産相続の手続きの中には期間の制限があるものもあります。そのため、まずはいつまでに情報を集めるべきかを知ることが大切です。
情報がわからない場合には、相談先で調べてもらうことができないか聞いてみるのが一番早い解決策です。 -
(5)どこに相談すべきか悩んでいるなら弁護士事務所に相談する
さまざまな相談先を紹介しましたが、結局どこに相談すればいいのかお悩みの場合は、まず弁護士事務所に相談してみましょう。
司法書士や行政書士が行える業務は、すべて弁護士も行うことができます。また、相続税の計算の前に遺産分割などやらなければならない手続きがたくさんあります。
それらの手続きも弁護士であれば対応することができるため、相続人・相続財産の調査など遺産相続手続きの全般的なサポートが必要な場合には弁護士に相談してみましょう。
4、遺産の相続の手続きサポート・トラブルは弁護士への相談がおすすめ
遺産相続の全般的なサポートが必要な場合には、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士であれば、遺産相続に関連する一通りの手続きに対応することができます。たとえば、相続人を調査し、相続財産を調べ、財産目録を作成することができます。また、遺産分割協議後の遺産分割協議書の作成も弁護士なら安心して任せることができます。
さらに相続人同士で遺産分割の話し合いが進まず、トラブルになってしまった場合にも弁護士であれば法律に基づいて正確に遺産を分配することができます。トラブルが生じた場合には、司法書士や行政書士、税理士では対応することができません。
ベリーベスト法律事務所は、行政書士・司法書士・税理士も所属しているため、必要に応じ連携して対応することが可能です。相続手続きの期限が迫る場合は、ワンストップで遺産相続の手続きを終わらせることができる、当事務所にぜひご相談ください。
5、まとめ
遺産の相談は、相談したい内容にあわせて選ぶことが大切です。そのうえで、料金や今までの解決実績、得意分野などを確認することで最善の解決を目指すことができます。どこに相談に行けばいいか迷っている方は、幅広くサポートが可能であり、トラブルの対応も可能な弁護士事務所に相談するのがおすすめです。
ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスでは、遺産問題の解決実績がある弁護士が遺産相続の状況に合わせた最適なアドバイスをします。遺産相続でお悩みの場合、まずはお気軽にご相談ください。
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