交通事故で骨折! 慰謝料請求や給付補償などについて
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草津市が公表している交通事故発生状況に関する統計資料によると、令和3年の草津市内の交通事故件数は332件であり、前年に比べて42件増加しています。また、負傷者数は392人であり、こちらも前年に比べて49人増加しています。
交通事故によって骨折をしてしまうと、骨折の部位によっては、仕事や日常生活に多大な支障が生じることになります。このような精神的苦痛に関しては、慰謝料を請求することができます。もっとも、加害者の保険会社から提示される慰謝料額については、相場(裁判所基準)よりも低く提示されていることもあります。不利な条件で示談をしてしまわないようにするためにも骨折の慰謝料に関する基本事項を理解しておくことが重要になります。
本コラムは、交通事故で骨折してしまった場合の慰謝料やその他の損害賠償について、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスの弁護士が解説します。
1、交通事故で骨折したときにもらえる慰謝料
交通事故で骨折したときにもらうことができる慰謝料としては、以下の2種類があります。
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(1)傷害慰謝料(入通院慰謝料)
傷害慰謝料とは、人身事故によって治療のために入通院を余儀なくされたことによる精神的苦痛に対して支払われる慰謝料です。
もっとも、精神的苦痛といっても、骨折などのけがをした場合の痛みの程度は人によってさまざまです。「痛みの程度」という主観的要素によって慰謝料額を定めると不公平な結果になってしまいます。
したがって、傷害慰謝料は、入通院にかかった日数や期間などの客観的な基準によって、金額を決めるという方法が選択されています。 -
(2)後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、人身事故によって後遺障害が残ってしまった場合に、後遺障害の内容や程度に応じて支払われる慰謝料のことをいいます。
交通事故によって骨折をすると骨折の部位や程度によっては、治療を継続したとしても事故前の状態には戻らず、痛みや痺(しび)れ、変形、運動障害や機能障害といった症状が残ってしまうことがあります。このように治療を継続しても症状の改善が見込めなくなった状態のことを「症状固定」といいます。症状固定時点で残っている後遺症の中でも一定の基準を満たした障害のことを「後遺障害」といいます。
後遺障害が生じた場合には、損害保険料率算定機構に申請することによって、後遺障害の内容や程度に応じて、第1級から第14級までの等級認定を受けることができます。そして、認定された等級に応じた慰謝料を、後遺障害慰謝料として請求することができます。
2、慰謝料を算定する三つの計算方法
慰謝料を算定する方法には、以下の三つの基準があります。
どの基準が採用されるかによって、慰謝料の金額は大きく異なってきます。
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(1)自賠責保険基準
自賠責保険基準とは、自賠責保険から慰謝料が支払われる際に利用される基準です。自賠責保険とは、すべての自動車に加入が義務付けられている強制保険であり、交通事故の被害者を救済することを目的とした保険です。
自賠責保険は、「加害者の経済的な負担を補塡(ほてん)して被害者を救済する」という目的で設定されているため、あくまで最低限度の補償しかなされません。基本的に、慰謝料を算定する三つの基準のなかでは、支払額が最も低くなる基準となります。
① 傷害慰謝料
自賠責保険の傷害慰謝料の計算方法は、実通院日数を基準にして「4300円×通院日数」という計算式によって算定します。この場合の「通院日数」とは、以下のいずれかのうち少ない方の日数が採用されます。- 実通院日数×2
- 総治療期間
たとえば、総治療期間6カ月で50日通院をしたとすると、実通院日数の2倍の方が総治療期間よりも低くなりますので、実通院日数の2倍である100日が採用されます。
この場合の傷害慰謝料は、4300円×100日=43万円となるのです。
② 後遺障害慰謝料
自賠責保険における後遺障害慰謝料は、後遺障害等級に応じて基準が決められています。
たとえば、脊椎骨折は後遺障害等級表では「脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」(第6級5号)に該当することがあります。
自賠責保険では、第6級の後遺障害慰謝料の基準は512万円となります。 -
(2)任意保険基準
任意保険基準とは、各保険会社によって独自に定められた慰謝料の支払い基準です。
一般的に各保険会社の基準は公表されていませんが、おおむね、自賠責保険基準に少し上乗せされた金額が支払われることが多くなっています。 -
(3)裁判所基準(弁護士基準)
裁判所基準とは、過去の交通事故の裁判例をもとにして基準化された慰謝料の支払い基準のことをいいます。
交通事故による損害賠償請求を求める訴訟を提起した場合には、裁判所基準によって慰謝料が算定されますが、弁護士が交通事故の被害者の代理人として加害者の保険会社と交渉をする際にもこの裁判所基準が用いられます。そのため、この基準は「弁護士基準」とも呼ばれます。
裁判所基準は、三つの基準のなかでは、支払額が最も高額になることが多い基準です。① 傷害慰謝料
裁判所基準の傷害慰謝料を計算する際には、原則として、入通院期間を基準にして計算をすることになります。
例外として、通院が長期にわたる場合には、症状、治療内容、通院頻度をふまえて実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもあります。なお、骨折によってギプス固定中などの安静を要する自宅療養期間については、入院期間と判断されることもあります。
具体的な計算方法については、「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)という書籍に基づいて計算をすることになります。たとえば、骨折によって、総治療期間6カ月で50日通院をしたとすると赤い本の別表Ⅰに基づいて、傷害慰謝料は116万円となるのです。
自賠責保険基準で計算した場合は43万円であったため、同じ通院期間と実通院日数であっても、自賠責保険基準と裁判所基準とでは2倍以上も傷害慰謝料の金額に差があることがわかります。
② 後遺障害慰謝料
裁判所基準の後遺障害慰謝料についても、自賠責保険基準の場合と同じく、後遺障害等級に応じて金額の基準が決められています。
たとえば、脊椎骨折によって「脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの」(第6級5号)と認められた場合には、裁判所基準における後遺障害等級第6級の基準である1180万円が、後遺障害慰謝料の目安となります。
自賠責保険の基準は512万円であったため、同じ後遺障害等級であっても、自賠責保険基準と裁判所基準とでは2倍以上も後遺障害慰謝料の金額に差があることがわかります。
3、慰謝料以外に請求できるもの
交通事故によって骨折をした場合には、上記の慰謝料以外にも、以下のような損害に関する賠償を請求することができます。
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(1)積極損害
積極損害とは、交通事故により被害者が実際に支払いを余儀なくされた費用に関する損害のことをいいます。
① 治療費
治療費とは、交通事故の被害者が病院で治療を受けた費用のうち必要かつ相当な実費のことをいいます。
② 通院交通費
通院のために公共交通機関やタクシーを利用した場合には、その実費を請求することができます。
基本的に、自家用車で通院をした場合には、1キロメートルあたり15円として計算した金額をガソリン代として請求することができます。
③ 付添看護費
入院や通院の際に付き添いが必要になった場合には、被害者自身の損害として付添看護費が認められます。
付添看護費は、入通院に付き添いをした場合に常に認められるものではなく、医師の指示の有無、けがの程度、被害者の年齢などを考慮して付き添いの必要性が認められることが必要です。
④ 入院雑費
入院をすることになった場合には、ガーゼ、テープ、包帯、おむつなどが必要になることがあります。このような入院中の物品購入費用については、入院雑費として請求することができます。
基本的に、自賠責保険基準では1日あたり1100円、裁判所基準では1日あたり1500円が支払われます。 -
(2)消極損害
消極損害とは、交通事故によって失われた利益のことをいいます。
つまり、「交通事故によって本来得られるはずであった収入が得られなくなったこと」を損害とみなして、その分の補塡を請求することができるのです。
① 休業損害
けがの治療のための入通院によって仕事を休まなければいけなくなると、交通事故の被害者は収入が減少してしまいます。
このような減収分については、「休業損害」として請求することができます。
休業損害は、一般的に「事故前1日あたりの基礎収入×休業日数」によって計算をします。また、会社やパートで働いていない専業主婦であっても、家事を労働とみなして、同年代の女性の平均的な賃金に換算した分の金額の休業損害を請求することができるのです。
② 逸失利益
交通事故によって後遺障害が生じてしまうと、障害の内容や程度によっては、事故前と同様に働くことができなくなることもあります。そうすると将来にわたって収入の減少が生じてしまいますが、そのような将来の減収分については「逸失利益」として請求することができます。
逸失利益を請求する際には、以下の計算方法によって逸失利益を算出します。
事故前の基礎収入額×労働能力喪失率×労働喪失期間に対応するライプニッツ係数
なお、「ライプニッツ係数」は、本来の収入よりも前倒しで逸失利益を受け取ることで発生する中間利息を控除するための指数です。
4、交通事故は保険会社に任せず弁護士へ依頼を
交通事故の被害に遭われた方は、以下のような理由から、弁護士に依頼することをおすすめします。
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(1)面倒な保険会社との交渉を任せることができる
交通事故の被害に遭った場合には、加害者の保険会社との対応を行わなければなりません。しかし、被害者の方は、けがの治療のために入通院をしなければならず、身体的にも精神的にも多大な負担を感じながら日々を過ごすことになります。
そのような状態で保険会社との交渉を行わなければならなくなると、被害者の負担はさらに増してしまうことになるでしょう。
また、示談交渉に不慣れな被害者の方だと、保険会社から提示された賠償額が適切なものであるかどうかを判断することができず、不利な条件で示談をしてしまうおそれがあります。
弁護士に依頼をすることによって、保険会社との対応をすべて任せることができますので、被害者の方の負担は大幅に軽減されます。
さらに、示談交渉の経験が豊富な弁護士であれば、被害者の方に最大限有利な条件で示談を成立させることができるように、交渉を進めることができます。 -
(2)慰謝料を増額することができる可能性がある
慰謝料の算定基準には、自賠責保険基準、任意保険基準、裁判所基準の三つがありますが、通常の事案であれば、被害者にとって最も有利な算定基準は裁判所基準になります。既に説明したとおり、裁判所基準と自賠責保険基準では、傷害慰謝料や後遺障害慰謝料の金額が2倍以上の差が生じることもあります。そのため、どの算定基準を採用するかは、被害者にとって非常に重要なことでしょう。
弁護士に依頼をすることによって、裁判所基準に基づいた慰謝料の請求をすることが可能となりますので、最終的に支払われる慰謝料の金額を大幅に増額させることが期待できるのです。 -
(3)適切な後遺障害等級認定による賠償額の増額が可能
交通事故で骨折をした場合には、痛み、痺れ、変形、運動・機能障害といった後遺障害が生じる可能性があります。後遺障害等級認定の手続きには、加害者の保険会社が行う「事前認定」と、被害者自身が手続きを行う「被害者請求」という方法があります。
事前認定の方法だと加害者の保険会社が書類の収集から提出まですべての手続きを行ってくれます。しかし、加害者の保険会社は保険金を支払う立場にあるため、被害者にとって有利な等級が認定されるように、積極的に動いてくれるわけではありません。
そのため、適切な後遺障害等級認定を獲得するためには、被害者請求の方法によって手続きを行うことが重要になるのです。
弁護士に依頼をすれば、後遺障害等級認定をサポートしてもらうことができます。
被害者請求の方法をとったとしても被害者自身の負担は事前認定の場合とほとんど変わりません。後遺障害等級によって後遺障害慰謝料や逸失利益の金額が大きく異なってきますので、弁護士に依頼をすることをおすすめします。
5、まとめ
交通事故によって骨折などのけがをしてしまった場合には、傷害慰謝料や後遺障害慰謝料を請求することができる可能性があります。適切な賠償額を獲得するためには、交通事故案件の経験が豊富な護士に相談をすることが大切です。
滋賀県にご在住で、保険会社との交渉に不安を感じている方や保険会社から提示された賠償額に疑問があるという方は、ベリーベスト法律事務所 滋賀草津オフィスにご連絡ください。
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